これまでマレーシアの活用パターンについて述べてきたが、マレーシアで成功するためのポイントをもう1つだけ挙げておきたい。それは、他国に進出する上では当たり前の視点だが、「マレーシアの国民性を理解すること」である。
筆者が以前、ASEAN各国の消費者の購買行動を調べたとき、「ブランドに対する忠誠心が薄く、ほとんどの消費行動を商品の必要性と価格の妥当性によって判断するという傾向」が、ASEAN各国の中で最も顕著に表れたのがマレーシアだった。中華系マレーシア人の知人に言わせると、これはマレー系の特徴とのことだが、いずれにせよ彼らの多くは日本製品のブランドにではなく、必要性と妥当性にお金を払う傾向が強いことを理解する必要がある。
国民の多数派であるイスラム教の習慣を理解することも欠かせない。よく知られているところでは、現地で雇用する際には、お祈りの時間や場所の確保、断食に対する配慮が求められる。他にも、女性に握手を求めてはいけない、子供の頭をなでてはいけないなど、日本人の感覚からすると想像もつかない禁止事項があるため、現地に行く前にいま一度確認した方が良いだろう。
マレーシア市場への参入に際しては、地場メーカーをうまく活用することも選択肢の一つとして考慮すべきだろう。例えば、ダイハツはプロデュアと、マツダはベルマツモーターと提携しているし、東洋タイヤはシルバーストーンを買収することにより、マレーシア国内シェアの24%を手に入れた。マレーシア企業は他のASEAN諸国に比べてそれなりに成熟した状態にあり、慎重に調べることで信頼のおけるパートナーが見つかる可能性がある。
ちなみに、マレーシアの治安はかなり良いが、やはり日本とは異なることにも留意する必要がある。メーターを倒さないタクシーもいまだに多い。かつて、鉄が高騰していたころ、現地の大型スーパーマーケットでは鉄製の台車が何万台も盗まれていた。このように、日本では想像もつかないことが起こることもあり、現地のビジネス状況に応じてリスクを分析し、対策を講じておくことが重要だ。
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