2017年5月25日木曜日

中国の格下げ、日本のバブル崩壊を想起

 一部のエコノミストは以前から、中国が日本と同じ運命をたどる恐れがあると警告してきた——つまり過剰融資に後押しされた好景気の後に長期停滞に見舞われ、その後遺症に苦しむということだ。

 米格付け大手ムーディーズは24日、中国の長期国債格付けを「A1」に引き下げ、少なくとも現状では両国の格付けは同水準になった。中国は、25年前に不動産バブルから金融機関の破綻危機に至るバブル崩壊を経験した日本と同様の問題に直面し、対応に取り組んでいる。しかし格付けが日本と同じレベルに引き下げられたことは、中国が日本のような経済の長期低迷を免れることができるかどうか不透明なままであることを想起させた。

 日本は第2次大戦後急速に経済を復興させ、1990年代には経済力は最高潮に達し、もう少しで世界一の経済大国になる勢いだった。当時、中国はまだ毛沢東時代の長年にわたる経済政策の失敗から立ち直る途上にあった。だが中国経済は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した後、急成長に転じた。21世紀に入ると日本を追い抜いて世界第2の経済大国となり、トップの座を米国と争うまでになった。

 ムーディーズなどが指摘している中国経済をめぐる懸念は、日本が1990年代初めに直面した問題と共鳴する部分がある。中国の成長の牽引役となってきたのは、当時の日本と同じ高水準の設備投資だ。設備投資が中国の年間成長率に占める比率は、1990年の3分の1から2010年にはほぼ半分に拡大した。

 不動産価格が急騰し、そのテンポが世帯収入やオフィス賃貸料の上昇率をはるかに上回っていることは、現在の中国と1980年代末の日本との共通点の1つだ。日本のバブルのピーク時には、東京の住宅用不動産価格は1年間に69%も跳ね上がった。だが同国の不動産投機家は間もなく熱狂の代価を支払うことになった。1990年代初めには土地価格が15年連続の下落を開始したのだ。

 不動産バブルの崩壊は、規制が不十分だった日本の金融システムの脆弱性を露呈した。それは、現在の中国にも重なり合うもう1つの懸念である。日本政府は住宅金融専門会社7社を救済するために多額の公的資金を注入した。また、不動産価格の高騰に依存した経営を行っていた大手百貨店そごうなど一部企業は事実上倒産した。

 その状況は、中国の一部銀行が影の銀行を利用して会計上の操作を行い、十分な情報開示なしに不動産融資を拡大していることを思い起こさせる。中国の不動産市場は過去2〜3年の間不調だったが、ここに来て再び急騰し始めている。北京の不動産価格は今年これまでに16%値上がりしている。

 他にも類似点はある。1990年ごろには日本の人口は15〜20年後には減少し始めることがはっきりしていた。実際にその通りになっている。高齢化と人口減少の見通しは、消費者や企業のムードを沈滞させた。それと同様に、国連の予測では中国の人口は今から約15年後の2030年代初めにはピークに達し、その後には急減すると見込まれている。

 現在、両国の経済統計はどの程度似ているのか。幾つかの経済統計をみると、日本の状況は中国より深刻なようだ。2017年第1四半期に日本経済の実質成長率は2.2%と比較的力強かったが、それでも中国の6.9%成長を大きく下回っている。

 日本の債務問題も、中国よりはるかに深刻なままだ。国際決済銀行(BIS)によれば、2016年第3四半期末時点で、中国の非金融部門(政府、企業、家計)の債務残高の対国内総生産(GDP)比は256%に上昇したが、日本は373%と途方もない規模である。

 日銀の黒田東彦総裁は最近、中国が日本より相対的に有利な点があることを認めた。「80年代遅くに日本は既に成熟した先進国となり、成長率は6.5%を大きく下回り、人口増加率はほぼゼロになっていた。一方中国では人口はまだ増加を続けており、都市化は今も進んでいる」と、黒田氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が東京で開催したイベント「CEOカウンシル」で述べた。

 それでも、日本が引き続き圧倒的に優位なのは、日本がすでに豊かな国だということを示す統計だ。世銀によれば、2015年に日本の1人当たりGDPは3万4524ドルで、中国の8069ドルの4倍強に達している。中国の指導者は多くの構造的問題に立ち向かっているものの、中国が豊かな先進国の仲間入りをするにはまだまだ先は長く、多くの努力を要する。

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