2017年5月25日木曜日

中国の格下げ、日本のバブル崩壊を想起

 一部のエコノミストは以前から、中国が日本と同じ運命をたどる恐れがあると警告してきた——つまり過剰融資に後押しされた好景気の後に長期停滞に見舞われ、その後遺症に苦しむということだ。

 米格付け大手ムーディーズは24日、中国の長期国債格付けを「A1」に引き下げ、少なくとも現状では両国の格付けは同水準になった。中国は、25年前に不動産バブルから金融機関の破綻危機に至るバブル崩壊を経験した日本と同様の問題に直面し、対応に取り組んでいる。しかし格付けが日本と同じレベルに引き下げられたことは、中国が日本のような経済の長期低迷を免れることができるかどうか不透明なままであることを想起させた。

 日本は第2次大戦後急速に経済を復興させ、1990年代には経済力は最高潮に達し、もう少しで世界一の経済大国になる勢いだった。当時、中国はまだ毛沢東時代の長年にわたる経済政策の失敗から立ち直る途上にあった。だが中国経済は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した後、急成長に転じた。21世紀に入ると日本を追い抜いて世界第2の経済大国となり、トップの座を米国と争うまでになった。

 ムーディーズなどが指摘している中国経済をめぐる懸念は、日本が1990年代初めに直面した問題と共鳴する部分がある。中国の成長の牽引役となってきたのは、当時の日本と同じ高水準の設備投資だ。設備投資が中国の年間成長率に占める比率は、1990年の3分の1から2010年にはほぼ半分に拡大した。

 不動産価格が急騰し、そのテンポが世帯収入やオフィス賃貸料の上昇率をはるかに上回っていることは、現在の中国と1980年代末の日本との共通点の1つだ。日本のバブルのピーク時には、東京の住宅用不動産価格は1年間に69%も跳ね上がった。だが同国の不動産投機家は間もなく熱狂の代価を支払うことになった。1990年代初めには土地価格が15年連続の下落を開始したのだ。

 不動産バブルの崩壊は、規制が不十分だった日本の金融システムの脆弱性を露呈した。それは、現在の中国にも重なり合うもう1つの懸念である。日本政府は住宅金融専門会社7社を救済するために多額の公的資金を注入した。また、不動産価格の高騰に依存した経営を行っていた大手百貨店そごうなど一部企業は事実上倒産した。

 その状況は、中国の一部銀行が影の銀行を利用して会計上の操作を行い、十分な情報開示なしに不動産融資を拡大していることを思い起こさせる。中国の不動産市場は過去2〜3年の間不調だったが、ここに来て再び急騰し始めている。北京の不動産価格は今年これまでに16%値上がりしている。

 他にも類似点はある。1990年ごろには日本の人口は15〜20年後には減少し始めることがはっきりしていた。実際にその通りになっている。高齢化と人口減少の見通しは、消費者や企業のムードを沈滞させた。それと同様に、国連の予測では中国の人口は今から約15年後の2030年代初めにはピークに達し、その後には急減すると見込まれている。

 現在、両国の経済統計はどの程度似ているのか。幾つかの経済統計をみると、日本の状況は中国より深刻なようだ。2017年第1四半期に日本経済の実質成長率は2.2%と比較的力強かったが、それでも中国の6.9%成長を大きく下回っている。

 日本の債務問題も、中国よりはるかに深刻なままだ。国際決済銀行(BIS)によれば、2016年第3四半期末時点で、中国の非金融部門(政府、企業、家計)の債務残高の対国内総生産(GDP)比は256%に上昇したが、日本は373%と途方もない規模である。

 日銀の黒田東彦総裁は最近、中国が日本より相対的に有利な点があることを認めた。「80年代遅くに日本は既に成熟した先進国となり、成長率は6.5%を大きく下回り、人口増加率はほぼゼロになっていた。一方中国では人口はまだ増加を続けており、都市化は今も進んでいる」と、黒田氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が東京で開催したイベント「CEOカウンシル」で述べた。

 それでも、日本が引き続き圧倒的に優位なのは、日本がすでに豊かな国だということを示す統計だ。世銀によれば、2015年に日本の1人当たりGDPは3万4524ドルで、中国の8069ドルの4倍強に達している。中国の指導者は多くの構造的問題に立ち向かっているものの、中国が豊かな先進国の仲間入りをするにはまだまだ先は長く、多くの努力を要する。

プリンタでネイル

 通販大手の千趣会が、最新ネイルプリンタを使用したジェルネイルサービス「ツメコ」の展開を始めた。ジェルネイルというと、専門のネイルサロンでネイリストが施術するイメージが強く、ハードルが高いように感じる。同社は、それを短時間で手軽にできるネイルプリンタをメーカーと共同開発。美容サロンなどで活用してもらう。新サービスの登場で美容業界はどうなっていくのか。実際にツメコを体験し、手軽さと"わくわく感"を味わった。

●女性が喜ぶサービスを新規事業に

 通常、ジェルネイルの施術には1〜2時間はかかる。ネイルアートのデザインによっても手間や時間が左右される。ツメコの場合は、前処理など全ての工程を含めて45分以内。プリンタに指を入れて色や柄を付ける工程に至っては、指5本を約20秒で仕上げる。

 新規事業としてネイルのサービスを考案したのは、千趣会の主要顧客である女性が喜ぶサービスを提供するためだ。通販事業による既存のリソースや強みを生かすことよりも、女性の悩みやニーズをくみ取ることを重視したという。事業開発チームの梅野理佳さんは「自分がネイルサロンに通っていて、技術が人によってバラバラだったり、時間やお金がかかったりすることに不満があった」と話す。

 需要や事業性などを研究した上で、事業化できると判断。海外製のネイルプリンタをヒントに、より性能が高いネイルプリンタの開発を始めた。日本のネイルサロンの技術力は高く、そこに近い水準のジェルネイルをプリンタでも提供する必要がある。ジェルや溶剤も大手メーカーと共同で独自開発した。研究期間も含めると、開発には約3年を要した。

 品質をネイルサロンに近づけるのは簡単ではなかった。ツメコでは、前処理として白や半透明のジェルを塗ってからプリンタで柄を付けていくが、開発当初はインクを載せるプリントの層が翌日には剥がれてしまった。そこで、インクをジェルに吸着させるための溶剤を独自開発。プリントの層とジェルを一体化させることができた。ツメコのジェルネイルは、少なくとも2週間は持つという。

●プラスアルファの美容サービスとして

 店舗への導入が決定しているのは約40台。契約台数の目標として、2017年に150台、2021年に1000台を掲げている。

 導入店舗の多くはヘアサロンだ。カットやパーマなどに追加するプラスアルファのサービスとしてジェルネイルを導入し、新規顧客獲得やサービス向上に役立ててもらう。事業開発チームマネージャーの山田誠さんは、「美容業界では"トータルビューティー"を目指す傾向が強くなっている。美容に関するサービスを総合的に提供するためのアイテムとして、ネイル専門店以外にも提案を広げている」と話す。エステサロンやまつ毛サロンなどにも営業を始めているという。

 ネイルに関する知識や技術がない店舗が多いため、技術的なフォローを手厚くしている。ツメコを導入するためには、トレーナーによる研修を受け、自主練習を積んだ上で、検定に合格することが必要となる。前処理は人の手で行うため、下地の塗り方や器具の使い方などのオペレーションを細かく指導するという。

●"使い分け"で市場拡大へ

 ツメコなら手軽にジェルネイルができるものの、ネイリストの仕事がツメコに置き換わるわけではない。プロのネイリストによる施術とツメコの"使い分け"によって、ネイル市場全体の拡大を目指す。

 ネイルサロンで複雑なデザインのジェルネイルをしようと思うと、5000〜1万円前後かかることが多い。ツメコの提供価格は3500円(推奨価格、税別)からとお手ごろ。デザインは300種類以上あり、毎月新作も追加される。そのため、普段からネイルを気軽に楽しむのに適している。一方、パーティーなどの特別な機会には、ネイルサロンで時間をかけて仕上げてもらう。そういった使い分けを提案することで、ジェルネイルの選択肢を増やし、裾野を広げる役割を担う。

 さらに、美容業界以外でも導入を検討する動きがある。例えば、競馬場から女性向けサービスの一環として、着物レンタル店からは着物と同じデザインのネイルを提供するサービスとして、導入の相談があったという。手軽におしゃれを楽しむサービスとして、美容業界の外にも可能性が広がりそうだ。

●魔法のように色が付く

 千趣会東京本社では、導入店舗に対する研修や検定が日々行われている。その場所で、実際にジェルネイルを施してもらった。ジェルネイルは初めての経験だ。

 まずはデザインを選ぶ。デザインは300種類以上。デザイナーやイラストレーターによるデザインもあり、華やかなものから個性的なものまで多彩だ。かなり迷った末、プリンタならではのきめ細かいデザインにしようと、花や鳥が描かれた華やかなデザインを選んだ。

 下地を塗ってもらう前処理では、爪の形をやすりで整え、甘皮を除去した後に、5種類の溶剤やジェルを順番に塗っていく。ベースが白色のデザインを選んだため、柄をプリントする前の段階で、真っ白な爪になった。

 ネイルプリンタでは、5本の指を一度にプリントする。人差し指から小指の4本と、左右逆の手の親指を一緒にセット。爪が上を向くように固定する。爪の大きさは人によって異なるため、固定した指をタブレット端末に映し出して柄の大きさを調整する。そこまで準備したら、いよいよプリントだ。

 プリントが始まると、普通のインクジェットプリンタのようにヘッドが左右に動き、手の上を通過すると爪の部分にインクが噴き付けられる。まるで魔法をかけたみたいに、あっという間に爪の上に柄が浮かび上がってくる。思わず、「わあ、すごい」と声を上げてしまった。最後に、トップジェルを塗って完成だ。

 花と鳥が描かれた細かいデザインが爪を彩っていると、手を見ているだけで楽しい。これならまたやってみたいと思う体験だった。

 普段あまりネイルアートをしない人にとっては、ジェルネイルは「大変」「高い」というイメージがあるが、ヘアサロンなどで手軽にできるならやってみようと思える。店舗にとっても、リース契約の初期費用15万円、利用料月1万円(税別)という少ない投資で始められる。

 千趣会は6月2日〜8月31日、新宿マルイアネックス(東京都新宿区)で、ツメコの専門店舗を期間限定オープンする。気軽にジェルネイルを楽しむサービスが広がれば、美容市場の活性化につながるかもしれない。

2017年5月23日火曜日

実質賃金、6年ぶりプラス=給与総額0.4%増—16年度

 厚生労働省が23日発表した2016年度の毎月勤労統計調査(確報値)によると、賃金の伸びから物価変動の影響を差し引いた実質賃金は前年度比0.4%増で、6年ぶりにプラスとなった。賃金が伸びた一方、物価は横ばいだった。

 基本給と残業代、ボーナスなどを合わせた現金給与総額(名目賃金)は0.4%増で、月当たり31万5452円と3年連続のプラスだった。

 名目賃金の主な内訳は、基本給に当たる所定内給与が0.2%増の24万360円、ボーナスなど特別に支払われた給与が1.9%増の5万5615円とそれぞれ伸びた。一方、残業時間が減少し、残業代など所定外給与は0.6%減の1万9477円。 

転職に失敗する人と成功する人の決定的な差 ビジネス全般にも共通する6つのNG

 あの東芝が経営危機に陥っています。大手上場企業に勤めたからといって一生安泰が続く時代は終わりました。勤務先の会社が大きく揺らいでも、他社から求められる人材であることが、現代のビジネスパーソンにとって重要な条件です。ただ、あなたが今勤めている会社で高く評価されていても、他社からも同等に評価されるとは限りません。企業の文化、風土、成長段階によって、求められる人材の要素は変わってくるのです。

 私はエグゼクティブサーチの世界で、ヘッドハンターとして19年間、2万人を超える一流人材と接触してきました。今回は、その知見を基に執筆した拙著『会社の壁を超えて評価される条件』で解説した、「激動の時代を勝ち抜く一流の働き方」についてお話しします。

「暗黙知」を共有できる人材か?
 大手企業から地方の中小企業まで、数多くの経営者の方々とお会いしてきました。そこから明確に見えてきたのは、長い時間をかけて社内で人材を育成していくというこれまでの人事スタイルに、大きな変化が起こっていることです。優秀な人材は社内で育てていくだけでは追いつかない。業務拡大など企業が抱え続けてきた課題解決には、むしろ外部から優秀かつ適格な人材を登用することのほうが有益だという判断が一般化しているのです。

 その主因の1つは、クライアント企業が求める人材の範囲が広がっているためです。2008年のリーマンショック以前は、経営陣の一翼を担うマネジメント層の人材を求める企業が主でしたが、昨年あたりから部長職や係長クラスといった幅広い範囲で人材を求める依頼が急増してきました。職域が実務層に広がっているということは、業務拡大を狙った増員、もしくは従来の事業に見切りをつけて新規事業へのシフトなどが背景にあるのでしょう。転職市場は今、大きな変革期を迎えています。

 しかし、そうはいっても、人材の「強引な引き抜き」のような欧米型の人材抜擢は日本企業では通用しません。かつての終身雇用制は崩れたとはいえ、日本の企業文化にはやはり、個人技的な人材を求めない、集団内での「暗黙知」を共有できる人材であるかどうかが、外部からの登用であっても大事な条件となってきます。私はそうした暗黙知の部分を仕事の「OS(オペレーティングシステム)」と定義づけました。その人材の仕事の進め方、志向性が、人材を求める企業側のOSと互換性があるのかどうか。他社があなたを評価してくれるかどうかは、そこにかかってくるのです。

 日頃、人材サーチの現場で思うのは、候補者のいい面ばかりではありません。「この部分がなければ、とてもいいのに」、もしくは「この人はこれで損をしてしまっている」と残念に思えることが決して少なくありません。他社からも評価される人材を目指すのなら、そうしたマイナス評価になりうる要素をあらかじめ知っておくことは必須です。

 以下は、私が著書の中でも触れた、面談の場、もしくはビジネスの場全般において避けるべき「べからず」6項目です。

アグレッシブさはかえって危険視される
 � 早口な説明、高い声音は、落ち着きのない印象を持たれ、信用を失ってしまいがち

� アグレッシブさを強調することは一見、エネルギッシュで魅力的に映るが、逆に危うさも周囲に与えてしまう

� 初対面から過剰に笑顔を見せるのは、良からぬ本心を隠しているのではないか、と疑われる可能性もある

� 初対面のときほど、目は口ほどにものを言う

� ヘッドハンティングの打ち合わせに際して、冒頭から収入の話から切り出すと、「おカネで動く人はおカネで転ぶ」と思われてしまう

� スーツや靴、鞄、時計などを高級ブランドでキメている人は、ブランド頼みで自分に自信がないのではないか、と勘繰られる

 私はつねに、人材の「心・技・体」を見抜くよう努力をしています。まるで武道のようですが、ビジネスにもこれは当てはまります。「心」は人格や思考行動特性、いわば前述のOSと同義です。「技」は文字どおり技能やスキル。「体」は第一印象や行為、態度そのものを指します。前掲の「べからず」6項目は、この「体」に該当する部分といえるでしょう。

 ただ、これらは確かに悪い印象を持たれてしまう要素ではありますが、肝心な「心」の部分までは見抜けません。そこで私が用意しているのは次の質問です。

 あなたの「動機」「安心(満足)」はどこにありますか?

 その人の行為の背景にどんな思いがあったのか。この人は何によって満足を得るのか——。そこから真の人物像は見えてくるものです。この問いは、何も私たちの専売特許ではありません。たとえば、ご自身の周囲の上司や部下に当てはめてみれば、彼らがどのようなタイプの人間なのかが見えてきます。どういったスタンスでの仕事を好むのかなどを把握することは、人間関係をスムーズにする意味でも有効に作用することと思います。

 では、一流の人たちのスタンスやルールはどのようなものでしょうか?

 私たちは複数回にわたって人材サーチの候補者とのあいだで面談を持ちます。百聞は一見に如(し)かず。人材の器量や魅力を知るには直接会うことが1番です。そこで見聞した一流人材のスタンス、ルール等をまとめてみると、次のようなポイントが挙げられます。

「こだわり」よりも「アバウトさ」
 � 一度決めたスケジュールは、たとえ悪天候であろうと遵守する

� アポイントメントは入ってきた順に対応。相手による優先順位はつけない

� 異業種からのオファーであっても、好奇心旺盛に飛び込める

� 仕事と生活を分けて考えない。「ワーク・ライフ・バランス」に縛られない

� 良い意味でも「アバウトさ」と「鈍感力」を持っている

� 正反対の価値観を持ち合わせることができる

� 「こだわり」を捨てることができる

 絶対に守るルールがあることは、その人物の仕事の進め方、仕事との向き合い方を象徴することでもあり、自社、他社を問わず、信用や信頼を獲得できる要素です。また逆に、自身を縛りつけない自由な発想を持ち、かつ異なる方法論であっても自分のなかに取り込んで考えられる。そんな思考法を私は「ヤジロベエの思考」と名付けています。

 一流人材、他社から求められる人材は、左右の手に提げた重りに揺られながら考えて、最適解を求めることを、これからの働き方の観点として取り入れていくことが有用です。近年、主張されることが多い「ワーク・ライフ・バランス」の考え方も、必ずしも仕事と日常生活の線引きに縛られることなく、柔軟に対応している方が多いというのが印象です。立場が上になられる方ほど、こういった傾向が強く、それゆえに自由な発想ができるのだと思われます。

 JR西日本の技術開発室に在籍し、当時最速といわれた「500系新幹線」の開発担当者の方のお話です。高速走行ゆえの風切り音の大きさを解消するため思い浮かんだのは、音もなく羽ばたくフクロウの翼の仕組みだったと言います。最も騒音を生んでいたパンタグラフの改良で問題を解決したのですが、そのヒントを生んだのは、開発担当者の方が「日本野鳥の会」の会員で、趣味のバードウォッチングのときにアイデアがひらめいたのだとか。オフの時間を仕事と完全に切り離さないことがイノベーションを生んだ好例ともいえるでしょう。

 会社の壁を超えて評価される人材がいかなるものなのか——。ここまでのお話で、大まかには把握していただけたと思います。では、最後に、人材を評価する企業側の評価軸の変化について、私なりの分析をお伝えします。企業も人間同様に年を重ね、人生のごとき山あり谷ありのドラマの中を生きています。そんな企業のライフサイクルをざっくりと分けるとすれば、次のようになります。

 � 創業拡大期:会社を立ち上げた当初は右肩上がり。事業拡大や成長へとつながる

� 安定期:業績が落ち着き、急激な拡大は収まるが、堅調な上昇を続ける

� 衰退・変革(再生)期:業績が下がり、イノベーションが求められる。何も手を打たなければ最悪は倒産。抜本的な改革に成功すれば最上志向期を迎える可能性もある

 転職を希望する企業がどの段階にあるのかによって、求められる人材の基準は変わってきます。あなたの能力はどの段階にいる企業で発揮されるのかを把握することは非常に大切です。それが合致しなければ、優秀だという評価は得られたとしても、適格な人材として仕事を進めることは難しくなります。

拡大期に必要な「What構築」人材
 そこで、段階ごとに求められる能力を具体的に挙げてみましょう。�の段階にある企業は、拡大期ゆえに多様なビジネスプラン、新たな価値観が求められます。成長の途中過程なので人員的に満たされていないこともあり、1人何役もこなせる能力が求められます。私はこの段階で求められる「何(What)をすべきか」を独自の思考から求めていく力を「What構築能力」と呼んでいます。

 続いて�の段階。現状を維持し続けるには、組織を潤滑に動かすために必要な人間関係の構築力が重視されます。堅調に組み立てられた流れを「いかに(How)そつなくこなしていくか」の能力、私はこれを「How能力」と称しています。この時期の企業には個性の強い「出る杭(くい)」(創造力が強い)タイプは疎んじられる傾向にあるといえるでしょう。

 最後に�の段階。安定期での成功法則を抑えつつも、新たな価値の事業を生み出していかなければなりません。�で求められたHow能力に加えて、�で重視されるWhat構築能力を持つ人材が評価されます。�との差異は、コスト削減をしながらイノベーションを求められるということです。

 自身の能力がどこで発揮されるもので、どういった状況にある会社において求められるものか。それを客観的に把握しておくことこそ、勤務している会社が「いざ」という事態を迎えたときの備えとなるのです。

ピーチ、国内航空会社初のビットコイン直接決済サービス導入に関する記者会見開催

 ピーチ(Peach Aviation)は、5月22日に記者会見を開催し、ビットポイントジャパンと共同で、仮想通貨「ビットコイン」を活用した直接決済サービスを、12月末までに導入すると発表した。ビットコインを用いた直接決済サービスの導入は、国内航空会社として初の試みとなる。記者会見では、ピーチ 代表取締役CEOの井上慎一氏が登壇し、同サービスについて説明した。

 冒頭井上氏は、これまでピーチが、"イノベーション"をキーワードに、あらゆる局面で"ファーストムーバー"、いわゆる"いちばん最初に取り組む"ということにこだわってきたことを示しつつ、そのファーストムーバーにこだわる新たな取り組みとして、日本の航空会社として初めて、仮想通貨「ビットコイン」を活用した直接決済サービスを、12月末までに導入すると発表。

 4月1日に、改正資金決済法が施行されたことで、今後国内でビットコインに代表される仮想通貨を利用した決済サービスや決済対応店舗の広がりが予想されるなか、ピーチはいち早く仮想通貨を活用するサービスを導入することで、顧客の利便性の向上や、インバウンド需要増大への対応、さらに地方創生につなげたいという。

 ピーチのビットコインを活用したサービスは、国内で仮想通貨取引サービスなどを展開しているビットポイントジャパンと連携して提供する。井上氏は、「ビットポイントジャパンは、世界で最も安全なビットコインのブロックチェーン技術を持っている」と述べつつ、「"安心・安全な取引の実現"をモットーに、仮想通貨交換地を運営するビットポイントジャパンと、安全を経営の最重要課題に掲げるピーチにとって、ビットコインサービスを展開するうえで最適なパートナー」と指摘。そして、「ピーチとビットポイントジャパンがタッグを組むことによって、どこよりも安全で安心なビットコイン取引を実現して、ビットコインを身近なものにしたい」と述べた。

 また井上氏は、ビットコインは世界共通通貨で、利用時に手数料がかからないため、利用者の利便性を飛躍的に高めると述べつつ、「ビットコインを活用した新たな旅の提案は、日本政府が掲げる2020年までのインバウンド4000万人、ひいては地域創生に対する新たな提案になる、またそうしたいと考えている」と、期待感を示した。

 取り組みに関しては、今後拠点化を予定している北海道や、東北、沖縄などをモデル地区として、地元自治体や企業と協力しながら就航空港周辺でのビットコイン加盟店を増やす計画という。合わせて、航空券購入や機内販売でのビットコイン決済なども実現されれば、ビットコインが普及している中国を中心としたインバウンド需要喚起につながるとした。

 続いて、ビットポイントジャパン 代表取締役社長の小田玄紀氏が登壇し、今回の取り組みについて説明。

 小田氏はビットポイントジャパンについて、「"安心・安全な仮想通貨取引"をコンセプトに、上場企業のリミックスポイントの子会社として、どこよりも安全でどこよりも安心な日本最大のビットコイン取引所を運営しています」と紹介。また、フリーダイヤルによるサポート体制を整えていたり、楽天証券でシステム開発責任者を務めたメンバーが開発した決済システムを利用し、証券会社レベルの強固なセキュリティと管理体勢のもとで運営したりといった、安心・安全に対する取り組みについて説明した。

 そして、仮想通貨を投資や投機の対象としてだけではなく、送金や決済など、日常生活を豊かにする手段として活用できるようなさまざまな提案を行なっているそうで、そういった技術を背景として、今回のピーチとの取り組みを実現させていきたいとした。

 その取り組みの具体例として小田氏は、「ビットコインしか使わない旅を提案していきたい」という。旅行のときの航空券の購入から、現地でのホテルやレストラン、土産物店での支払いに至るまで、すべてビットコインで済ませられるようにしたいとのこと。また、現金しか使えない店舗については、ビットコインを現金化できる「ビットコインATM」を設置することで対応し、「お財布を持たずに旅行ができる」ようにしたいという。

 ビットコインATMは、ビットコインを売却して現金化するための端末で、まずはピーチが就航している北海道、東北、沖縄の空港カウンター周辺に設置していく計画とのこと。最後に小田氏は、「我々は、仮想通貨を活用して日本を元気にしたいと考えています。そしてこの取り組みが、地方創生や、訪日外国人観光客の増加に寄与できるのではないかと考えています。これからのピーチとビットポイントジャパンの取り組みにご期待ください」と述べ、挨拶を締めくくった。

 その後、質疑応答において今回の連携に至った経緯について問われた井上氏は、「ピーチは、イノベーションを通じた新しい顧客価値の創出を目指して、さまざまな意見交換を行なっているが、そのなかで小田社長と出会い、今回の連携に至った」と回答。また、具体的な提供サービスについては、「現時点ではまだ具体的な内容は決まっていない」(井上氏)としつつ、利用者の利便性を高めて、より集客につながるものにしたいと回答した。

 また、現在のビットコイン取引状況について問われた小田氏は、「2016年末の段階で、94%が中国で取引されている」と指摘しつつ、直近では日本での取引量が全体の50%を超えるようになっており、「日本でも今後はさらに取引量が増えると想定される」と指摘。そして、そういった状況を背景として井上氏は、「中国を中心としたインバウンド需要の喚起や、国内でも増えているビットコインを取引している人をターゲットにしたい。現在ビットコインを使える店舗は限られるが、そこにチャンスがあると考えている。ビットコインが使える店舗を急激に増やせば、ビジネスとして十分やっていけると考えている」と期待感を述べた。

来場者低迷、レゴランド隣接店舗が2か月で閉店

 名古屋市港区のテーマパーク「レゴランド・ジャパン」の隣接地に今年3月オープンした複合商業施設「メイカーズ ピア」で、テナントのレストラン1店舗が22日の営業を最後に閉店したことが分かった。

 運営会社は、来場者が想定を大幅に下回っていることが理由と説明している。

 メイカーズには現在、飲食店や物販など約50のテナントが出店している。レゴランドの来場者をターゲットに、親子でそば打ちなどが楽しめる「体験型」店舗も多い。

 撤退を決めたレストランはシーフード料理を中心に提供、6年間の契約で出店したが、オープンから約2か月で閉店する。運営会社は「売上高は想定の10分の1。レゴランドが思ったように集客できておらず、テナント側には手の打ちようがない」と話した。契約途中の退店による違約金の支払いについて、メイカーズ側と協議しているという。

不動産バブル国ランキング 果たして日本は何位?

オリンピック景気への期待に支えられ、昨今の東京における不動産取引の活況ぶりは、世界一の不動産市場としての地位を誇示しているかのように見えます。けれども果たしてそれは、客観的な事実に基づいてのことなのでしょうか。

ここでは世界の不動産投資家に対して、国際的な観点から多角的なデータを提供しているとの定評のある「GlobalPropertyGuide」から、現在バブル期を迎えている各国の不動産についてのデータを整理しておきたいと思います。

■不動産の客観的な評価とは

不動産バブル国ランキング 果たして日本は何位?
住宅不動産への投資を決意した人でも、外国の物件にまで手を伸ばすのは躊躇しがちです。その最大の原因として、多くの人は「情報が少ないから」と答えます。そのような人は、一度「GlobalPropertyGuide」に目を通してみることをおすすめします。

海外不動産への投資に関しては「外国人が財産を購入することができるのか」「不動産価格は妥当か」「どの程度の家賃収入が見込めるのか」「売買コストや税金はどのくらいか」「オーナーとテナント間の法律は整備されているか」など、疑問点が次から次へと浮かんできます。

「GlobalPropertyGuide」は、そのような疑問点をかなりのレベルまで解消してくれるでしょう。なぜなら、対象物件を客観的に評価できるだけの情報が揃っているからです。

また「GlobalPropertyGuide」のデータベースには、☆の数で表された長期投資の評価が明示されています。ここでは「総賃貸利回り」「所得税」「キャピタルゲイン税」「往復の旅費をはじめとする取引費用」「潜在的な家主とテナントの問題」「長期的なGDP成長」「潜在的な供給の過剰」「投資家に対する長期的な魅力」などの各項目について、大いに参考にすべき調査結果が提供されているのです。

■最も収益率が高かったのは?

世界の住宅不動産の中で、総賃貸収益率が高かったのはどこだったのでしょうか。

エクアドルのキトが8.04%で10位にカウントされたのをはじめ、1位となったモルドバのキシナウに至るベスト10は次の通りでした。なお、各該当地には長期投資評価を表す☆マークの数を示しておきました。

10位 エクアドル、キト (総賃貸収益率 8.04% 優秀)☆3つ

9位 ヨルダン、アンマン (総賃貸収益率 8.13% 優秀)☆5つ

8位 バハマ (総賃貸収益率 8.16% 優秀)☆4つ

7位 エルサルバドル、サンサルバドル (総賃貸収益率 8.49% 優秀)☆3つ

6位 タンザニア、ダルエスサラーム (総賃貸収益率 8.57% 優秀)☆2つ

5位 インドネシア、ジャカルタ (総賃貸収益率 8.61% 優秀)☆3つ

4位 ウクライナ、キエフ (総賃貸収益率 9.09% 優秀)☆2つ

3位 エジプト、カイロ (総賃貸収益率 9.40% 優秀)☆3つ

2位 ジャマイカ、キングストン (総賃貸収益率 9.75% 優秀)☆3つ

1位 モルドバ、キシナウ (総賃貸収益率 10.00% 素晴らしい)☆3つ

■日本のランクは……!?

総賃貸収益率のベスト10を見ても、日本の姿は見当たりません。目を凝らしてデータベースを辿ってみると、ようやく発見できました。

66位 日本、東京 (総賃貸収益率 3.43% 非常に悪い)☆2つ

世界の80ヵ所についてランキングされている中で、バブルに見舞われているはずの東京は、なんと66位に沈んでいたのです。総賃貸収益率は3.43%と、1位のキシナウに比べれば1/3強に過ぎないうえ、長期投資の評価も☆2つにとどまっています。

こうした具体的なデータを見る限り、日本の不動産投資はまだまだこれからだといえるでしょう。世界の不動産市況から日本の不動産市況を見てみると、新たな発見があるかもしれません。

3Dプリンタで作った人工卵巣を使った出産、マウスで成功

米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学校などの研究者らが、マウスによる実験で3Dプリンタで作成した「人工卵巣」を使い子孫を産ませることに成功した(ScienceLiveScienceNature Communications掲載論文)。

今回使用された人工卵巣はゼラチンをフィラメント(3Dプリントの素材)として利用し、スライド上にさまざまな形状のパターンを3Dプリントして作成されたもの。これにマウスの卵胞を挿入して卵巣を摘出したマウスに移植したところ、3匹が子を産むことに成功したという。

研究者らによると、卵巣を失った人間の女性に対しても同様の手法を使用することで子供を作れるようになる可能性があるという。

 

2017年5月18日木曜日

東京株、300円超安=米大統領疑惑が波及

 18日午前の東京市場では、トランプ米大統領によるロシアへの機密情報漏えいや連邦捜査局(FBI)の捜査妨害をめぐる疑惑を嫌気して、円高・株安が進んだ。円相場は約3週間ぶりに1ドル=110円台に急伸。日経平均株価は一時前日比300円以上下げ、節目となる1万9500円を割り込んだ。

 外国為替市場では、米政権運営の先行きに対する不安から安全資産とされる円が買われた。市場関係者は「米政治の混乱で、米利上げペースが鈍化するとの見方が強まれば、ドル売り・円買いが一段と進む」(FX会社)とみている。午前10時現在の円相場は、110円95〜96銭と、1円49銭の大幅円高・ドル安。

 株式市場はほぼ全面安の展開。米株安や円高を受けて輸出関連株などが売られた。市場では「円相場が落ち着くまでは手を出しにくい」(中堅証券)との声が出ている。 

2017年5月16日火曜日

テントウムシが羽を折り畳む仕組み、東大など解明 人工衛星や傘に応用へ

 テントウムシが柔らかい「後ろ羽」を折り畳んで、硬い「さや羽」の中に収納するメカニズムを解明したと、東京大学などが516日に発表した。人工衛星のアンテナや折り畳み傘などの展開方法に応用できるという。

 
人工さや羽を移植したナナホシテントウムシ(左)

 テントウムシは、頑い「さや羽」と柔らかい「後ろ羽」を持ち、さや羽の内側から後ろ羽を素早く広げて飛び立つ。着陸時は広げた後ろ羽を折り畳み、さや羽に収納するが、その詳しいメカニズムは分かっていなかった。

 研究チームは、内部の構造が見やすいように、紫外線硬化樹脂製の「人工さや羽」を作成し、テントウムシに移植。後ろ羽を折り畳む様子が透けて見えるようにし、高速度カメラで撮影したところ、さや羽の内側の曲面やエッジなどを利用しながら、背中でこすり上げて徐々に羽を中へと引き込む——という仕組みを確認できたという。

 
人工さや羽を移植

 
高速度カメラで撮影した、羽を折り畳む様子

 さらに、羽の折れ線部分がどのような構造になっているかを、マイクロCTスキャナーを使い解明したところ、人工衛星用アンテナなどに使われる「テープ・スプリング構造」が存在することが判明。テントウムシはこの構造を利用し、飛行時の羽ばたきに耐えられる強度と、素早くコンパクトに折り畳む機能を両立しているという。

 
マイクロCTスキャナーによる解析結果。青と赤の斜線部分がテープ・スプリング構造

 研究チームは「テントウムシの後ろ羽は、進化の過程で『飛行』と『折り畳み』の機能が見事に融合されている」と指摘。「硬いパーツをジョイントでつないで作る人工的な機構とは異なり、フレームの部分的な柔軟性が巧みに利用されている」という。これらの仕組みは、人工衛星のアンテナ、傘や扇子などの展開方法の改善に生かせるとしている。

 研究成果は、米科学アカデミー紀要(電子版)に515日付(現地時間)で掲載された。

 

2017年5月10日水曜日

人生100年時代を生き抜く鍵は、自己投資にあり

100年生きる時代が当たり前に
世界は今後どのように変化していくのでしょうか。2015年の平均寿命は男性80.79歳、女性87.05歳(厚生労働省調べ)。その10年前の2005年では男性78.56歳、女性85.52歳と、10年あたり2、3年のペースで寿命は伸びています。また、平均寿命だけでなく、健康寿命も伸びており、人が健康に100年生きる時代がすぐそこに来ています。
長寿化で問題となるのが「お金」です。

60歳で定年し、残り40年を貯蓄と年金だけで生活するのは至難の技。

現役期間を延ばして働き続けるにしても、ロボットや人工知能(AI)に10年後、20年後には仕事の半分以上が代替されると言われています。

このような時代を生き抜くためには、自分磨きが欠かせません。

自己投資は必ずリターンを考える
自分磨き、つまり自己投資をするために、あなたなら何をしますか?
例えば、資格取得や、英語力、PCスキル、ITスキル、ロジカルシンキング力などの向上が思いつくでしょうか? 人脈を広げるために、異業種交流会やセミナーに積極的に参加するのも良さそうですね。

ここで注意しなければならないのが、自己投資とは「投資」という言葉が付いている通り、投資であればリターンを考えるのが必須ということ。また、リターンは得られるけど時間がかかりすぎるというのもNGです。つまり、自己投資は時間と費用対効果を考えて行う必要があるのです。

リターンを考えずに自己投資をしている例を挙げると、「将来必要になるかもしれないと資格の取得をしたのはいいが、一向に仕事の役に立たない」、「セミナーや本で知識を得る事はできたが、実行していない」、「英語力をつけるために英会話に通い始めたのはいいものの、通えなくなってしまった」などです。

自己投資の失敗は、時間と費用対効果を考えていないから起こりますが、簡単に言えば「後先考えずに行っている」からです。今は必要ないが、将来必要になるかもと資格取得や習い事をしている方は一度見直しを行うと良いかもしれません。

お金に換算できない「見えない資産」を増やす
10年、20年後にどのような仕事があるか一度ゆっくり考えてみてください。仕事は、ロボットや人工知能に代替されにくい能力が発揮できる仕事が残りそうですよね。代替されにくい仕事は、人間ならではのスキル、例えば、共感能力、創造性、柔軟性、敏捷性、コミュニケーション力などを生かした仕事と言えます。このようなスキルを伸ばしていくと良いでしょう。
でも100年生きる時代は、それだけでは十分ではありません。自分の知識やスキルを活かして仕事をするにしても、仕事をくれる人脈、一緒に働いてくれる仲間、長く働き続けるための健康も必要となってきます。

つまり、100年生きる時代においての自己投資は、知識、スキル、人間関係、評判、健康などお金に換算できない「見えない資産」を増やすことと言えます。

ただし、自己投資のしすぎは禁物
自己投資がいくら大切と言っても、毎月赤字家計になったり、家計が破綻してしまったりしては元もこうもありません。赤字家計や家計破綻を避けるためには、自己投資の割合を決めておくと良いです。
割合は働き方や家族構成によって、自己投資の割合は変わってくると思いますが、手取りの1〜2割を目安にすると家計に負担なく済みます。そして、肝心要の自己投資先は、時間と費用対効果を考え決めるようにしましょう。

自分にとって本当に必要な自己投資なのか、あるいは浪費(回収不能)になってしまうのかを見極めることが大切です。

「申請しないと貰えないお金」一覧

「貰えるお金」は知るだけでお得
国や自治体には実に様々な制度、助成金などがあります。それらを利用するには、まずはどんなものがあるのかを知り、申請をしなければいけません。これを面倒と感じ敬遠するのは、とてももったいないこと。こうしたお金の原資は、私たちが納めている税金や社会保険料です。使えるものは上手に利用すべきでしょう。

またどんな制度があるのかを知っておくだけで、実はお得。なぜなら、いざというとき公的な助けが得られることがわかっていれば、不安に駆られて過剰に保険に加入する…ということを防げるからです。

では実際にどんな制度があるのか、いくつかご紹介しましょう。

●高額療養費制度
病気やケガで入院をすると、医療費が高額になることがあります。そうした際に医療費の負担を軽減できるようにしたのが「高額療養費制度」。1カ月の医療費が一定額を超えた場合、その金額が払い戻されます。

この制度で忘れられがちなのは、次の(1)〜(3)の場合、負担額をさらに軽減する仕組みがあることです。(1)1カ月の間に同一人が複数回受診(2)1カ月の間に同じ世帯の複数人が医療機関を受診(3)直近の12カ月間に高額療養費の支払いが4回以上

特に(2)は見落としがちですので、注意が必要です。該当する可能性があるなと思ったら、一度家族全員の医療費を調べてみてください。

●医療費控除
家庭内で1年間に医療費が10万円以上かかった場合、所得からその分を差し引き税金を軽減してくれるのが「医療費控除」です。

対象になるのは、病院、歯科医院などの治療費、入院費、医師の処方箋による薬代などだけではありません。市販の風邪薬や胃腸薬、治療のためのマッサージ、鍼灸代、通院時の交通費、妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、レーシック手術費用なども対象となります。

控除を受けるには確定申告が必要です。世帯で一番所得の多い人が申告するといいでしょう。

●障害年金
年金といえば老後に受け取る「老齢年金」が一番に思い浮かびますが、現役世代を支える年金もあります。そのひとつが、年金の被保険者が病気やケガで障害認定された場合に支払われる「障害年金」。一度申請し認定されると、その状態が続く限り受給し続けることができます。

障害という言葉から四肢の不自由、失明などをイメージする方が多いと思いますが、対象となるのはそれらだけではありません。精神疾患(躁うつ症、統合失調症など)。目の疾患(白内障、緑内障など)。呼吸器疾患(肺結核、気管支ぜんそくなど)。悪性新生物(がん)、白血病、糖尿病なども対象となります。ただ、罹患したら障害認定されるのではなく、あくまで肢体や精神系統の障害の"状態"で判断されます。障害年金は知らずに申請を逃している方が多くいるようです。

●専門実践教育訓練給付金
専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が認定した講座を受講した場合に給付金が受け取れます。支給額は、受講者が支払った教育訓練費用のうち40%(年間上限32万円)から60%(同48万円)と手厚いのが魅力です。

対象講座は国内MBAや法科大学院のほか、看護師、栄養士、救急救命士などもあります。本気で学び、仕事に活かしたい人には見逃せない制度です。

自治体独自の制度は問い合わせるのが正解
以上のように、どこに住んでいても受け取れるお金のほかに、地方自治体によって設けられている制度もあります。「住宅の耐震診断費用・耐震補強工事助成金」、地方に移住して就職すると貰える「UJIターン支援金」、人口減に悩む自治体では「結婚仲人報奨金」などがそうです。こうした助成金や補助金は、各自治体が独自に設けているものが多く、制度の有無、対象者、金額などは問い合わせて調べる必要があります。

「こういう制度がありますよと、もっと役所が教えてくれればいいのに」と思うかもしれませんが、役所にとっては、一部の方だけ対象となる情報に関して、個別に案内するのは難しいものです。賢く使うには「自分で調べ、申請する」ことが必要。方法としては、住んでいる自治体に電話をして「00に関して使える制度はないですか?」とたずねるのが一番てっとり早く正確です。ぜひ一度問い合わせてみてください。大いに助かる情報が見つかるかもしれませんよ。

主な「申請するともらえるお金」
※制度・助成金の名称は自治体により異なる場合があります

【全国で貰えるもの】

名称:高額療養費制度

対象者:健康保険の被保険者および被扶養者

もらえる額の目安:上限なし

金額の決め方[地方自治体の例]:1カ月の医療費のうち、一定額(年収370万〜770万円程度の場合、8万〜9万円程度)を超える金額が払い戻される

申請先:健康保険組合、市区町村(国保)

名称:医療費控除

対象者:1年間に家族の医療費が10万円以上の人

もらえる額の目安:上限約90万円(所得控除の上限は200万円)

金額の決め方[地方自治体の例]:1年間に支払った医療費(保険適用を除く)のうち10万円を超える金額を所得控除

申請先:税務署

名称:障害年金

対象者:国民年金・厚生年金の被保険者

もらえる額の目安:年額58万5100〜97万5100円

金額の決め方[地方自治体の例]:障害の程度による

申請先:年金事務所

名称:専門実践教育訓練給付金

対象者:雇用保険の被保険者等で、厚生労働省が指定する講座や授業を受講した人

もらえる額の目安:上限48万円

金額の決め方[地方自治体の例]:受講費用のうち40%(年間上限32万円)〜60%(同48万円)。

申請先:ハローワーク

名称:出産育児一時金

対象者:出産育児一時金

もらえる額の目安:42万円

申請先:健康保険組合、市区町村(国保)

【自治体により貰えるもの】

名称:出産祝い金

対象者:出産した人(自治体が定める条件に合う人)

もらえる額の目安:数万〜100万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【北海道福島町】第1子5万円、第2子20万円、第3子100万円(うち30%は町内商品券、第3子は3年分割)

申請先:市区町村

名称:太陽光発電システム補助金

対象者:太陽光発電システムを設置しようとする人

もらえる額の目安:数万〜20万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都多摩市】戸建て住宅で1設備あたり5万円

申請先:市区町村

名称:生垣緑化助成金

対象者:戸建てや共同住宅で生垣・壁面緑化をした人

もらえる額の目安:数万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【兵庫県神戸市】戸建て住宅で5000円/m(総額5万円)

申請先:市区町村

名称:耐震診断費用助成・耐震補強工事費助成

対象者:自宅の耐震診断や耐震補強工事を行った人

もらえる額の目安:数万〜数十万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都台東区】耐震診断費用の全額(木造の場合。上限15万円)、または半額(木造住宅以外の住宅の場合。上限50万円)

申請先:市区町村

名称:住宅リフォーム助成

対象者:自宅のリフォームをした人

もらえる額の目安:数万〜20万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都目黒区】上限10万円(一般・バリアフリーリフォーム)、または20万円(アスベスト除去)

申請先:市区町村

名称:家賃補助・住み替え助成

対象者:賃貸住宅に住んでいる人、引っ越しをする人

もらえる額の目安:数万〜30万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都新宿区】子育てファミリー世帯が区外から転入する場合、契約時の礼金・仲介手数料の合計・最大36万円、引っ越し費用の実費・最大20万円

申請先:市区町村

名称:UJIターン支援

対象者:地方へ移住する人

もらえる額の目安:数十万〜150万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【北海道沼田町】町内に土地を購入して1年以内に住宅を新築した場合、150万円(町内業者施工)または80万円(町外業者施工)

申請先:市区町村

名称:結婚仲人報奨金

対象者:人口減に悩む地域で、カップルの仲を取り持った人

もらえる額の目安:5万〜20万円程度

金額の決め方[地方自治体の例]:【山梨県小菅村】永住を前提として村内に住所を有している若者の結婚を成立させた場合、20万円

申請先:市区町村

「富をつくる」ために必要な3条件とは? 30代で人生は決まる

10年後の貯金は大丈夫?家計シミュレーションの方法10年後の貯金は 家計をシミュレート
語弊があるかもしれませんが、35歳まででほとんどの人の人生の勝負はつくと私は思っています。これはつまり、30代でその人の人生のおおよその方向性は決まってしまうということです。

ただし、あなたがすでに40代以上でも、そんなに肩を落とさないでください。ケンタッキーフライドチキンの創業者であるカーネル・サンダースが起業したのは60歳を超えてからですから、もちろん例外もあるということです!

(本記事は、菅下清廣氏の著書『ゼロから富を作る技術(かんき出版2014/2/19)』の中から一部を抜粋・編集しています)

■30代で人生は決まる 身につけたい「よい生活習慣」とは?

ただ、多くの人々とお会いしてきた経験と、私自身の人生を振り返ってみても、35歳になるまでの過ごし方がその後の人生に大きな影響を与えることは真実だと思います。

投資は何歳になっても始められますが、本書を読んでくださっている方で若い人の場合は、せっかくですので、次のことを意識して過ごせば、大きなチャンスをつかむきっかけを作ることができます。最初に社会に出てからの10年というのは非常に重要です。

20代の人はとくに心して、次の2点を意識して過ごせば、その後の人生でお金持ちになるためのステップを上る、確固とした土台を作ることができます。

�よい生活習慣を身につけ、健康な体と頭脳を鍛えよ

�恒産なくして恒心なし。元手となる資金を貯めよ

よい生活習慣とは、

・早寝早起き、スケジュール管理をきちんとして時間を無駄にしない

・タバコ、酒、飲食のToomuchを避ける。禁煙(ノースモーキング)は世界の常識

・金融や経済、投資についての教養(リテラシー)を身につける

・読書をしたり映画を観たり、さまざまな文化、芸術に触れてセンスを磨く

・信頼できる医療機関を見つけ、ふだんから健康管理に気をつける

などです。

■「恒産なくして恒心なし」 資金を貯めて心の余裕を

そして、来るべき30代に備えて、元手となる資金も貯めておきましょう。現在、ほとんど貯金がないという人は、まずは100万円を目標にしてみてください。100万円が貯まったら次は年収の1年分。理想は、年収の3年分です。

100万円でも200万円でも、それくらいのお金が貯まった時点でふと、それまでの自分とは心の余裕の具合が違うことに気がつくはずです。

それが「恒産なくして恒心なし」ということ。中国の孟子の教えで、生活の基盤となる財産や仕事が安定していなければ、道義心や良識を持つことは難しい、という意味です。

ある程度の貯金がなければ、怖くて投資にも挑戦できませんよね。投資の元手となるお金を作るという目的以外にも、貯金には「心の余裕を生む」という効果があるのです。

せっせとお金を貯めるのも簡単なことではないように思うかもしれませんが、先述した「よい生活習慣」を心がけていれば、やみくもにお金が出ていくようなことにはなりませんから大丈夫です。

そして30代を迎えたら、そろそろ自分の人生を進めるおおまかな方向を決めるという意識で日々を過ごしましょう。投資とはまた別の、自分の「職業」としての方向性です。

自分は何が得意で、どんな仕事をしていたいのか……。これはぜひ30代のうちに固めておいていただきたいと思います。

自分の進むべき道をある程度絞ったら、そのジャンルにおける一流の人脈の末端に連なるべく、技術と知識、経験を蓄積しましょう。

厳しいことを言うようですが、自分の専門分野でエキスパートになれない人は、プラスアルファで行う投資でもうまくいくはずがありません。

『習慣とは非常に軽いものであり、普段はその存在にさえ気づかない。だが一度意識すると、非常に重く断ち難いものであることがわかる』

■富を築くために最低限必要な3つの条件

自分の仕事に精通したうえで、さらに金融リテラシーを身につけることが富を築くための方法ですが、そのために最低限必要な3つの条件をここでお伝えしておきたいと思います。

1.健康であること

私が日々の生活において最も気を遣っていると言っても過言ではないのが、健康管理です。スポーツ選手が健康管理に非常に気を遣うことはみなさんもご存知だと思います。

それはなぜでしょうか? もちろん、体が資本だからです。野球選手で言えば、バッターボックスに立たなければ仕事にならないのです。

私たちだって同じです。お金を稼ぐためには、何もせずにじっとしているわけにはいきません。そのためにも、くるくるとよく動く頭脳と体が必要なのです。

とくに私の場合、大和証券を経て外資系のメリルリンチに転職した際、「セルフコントロール(自主管理)」の必要性に目覚めました。

外資系の証券会社では結果を出さなければ明日はありません。その代わり、結果を出すプロセスは基本的に個人に任せられますし、結果に対しての報酬も莫大です。

メリルリンチに移った私は自分がプロスポーツ選手になったつもりであらゆるセルフコントロールに精を出すようになりました。その1つが健康管理なのです。

みなさんの中でもとくに日本の企業で会社員をしている人には、セルフコントロールの重要性への意識が希薄な方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、すでに説明した通り、富を築くためには他人にコントロールされる状況から抜け出す必要があります。ですから今現在においてはサラリーマン生活を送っている人でも、徐々に自主管理・セルフコントロールの重要性に目覚めていただきたいと思います。

健康管理には具体的に「早起き」「いい睡眠をとる」「体を鍛える」「食事」など細かい内容がたくさんありますが、その解説は第6章で行うことにしましょう。

2.人脈と運を引き寄せること

自分の仕事に精通し、さらに金融リテラシーを磨いて富を築くための準備はバッチリ。

そのようなすばらしい努力家の人でも、まだ足りないものがあります。しかも、富を築くためには実はこれが一番重要、かつ手に入れるのが難しいかもしれません。

それは「人脈」と「運」です。ウォール街で出会った私のアドバイザー、ポールはこう言っていました。

「グッド・ピープルと出会え」

「グッド・ピープル」、すなわち人脈です。人脈とは、誰とつながっているとか、誰と知り合いだとか、そのようなつながりのことだけを指すのではありません。

どんな人と出会い、どんな影響を受け、どんなことを学ぶのか。私の人生を振り返っても、要所要所で誰かが私の人生に影響を与えてきたように思います。どんな人を顧客にして、どんな人を友人にするのか。どんな上司や同僚と出会うのか。

「グッド・ピープル」と言える「人」と出会うことが、自分の成功を左右する。そのようにポールは言っていました。

同じようなことを、後にメリルリンチからラザード・ジャパン・アセット・マネジメントに移った際にも、フランス系ユダヤ人である当時の総帥から口をすっぱくして言われたものです。

「私たちが相手にしているのは世界の一流の顧客、ファーストクラスの人々だ。ミスター・スガシタ、君もこの方針を守り、日本の最上級の顧客を開拓するように」

「グッド・ピープル」と呼ばれる人は、単にお金をたくさん持っている人のことではないともポールは言っていました。ではどんな人が「グッド・ピープル」なのか。

そこまで具体的な教えを仰いではいませんが、博識でウィットに富み、洗練された見た目、魅力的な人々。そこに金融の専門知識をもってしてようやく信頼を勝ち取ることができるような相手。そのような人たちということだけで、もう十分でしょう。

そして、そのような人たちに出会うために必要となるのが「運」です。投資の世界においてはとくに、知識や技術だけでは生き残ることのできない何かがあります。私はそれが「運」だと思っています。

科学的根拠に乏しい話で恐縮ではありますが、日常生活においても、個人個人の持つ「運」が人生を左右しているということはみなさんもなんとなく感じていらっしゃるのではないでしょうか。

ただ、「運」は自分の心がけ次第で引き寄せることができます。生まれ持ってのものも多少ありますが、それ以外の方法でも、「運」と「人脈」を引き寄せることはできるのです。その詳しい内容は第5章と第6章をご参照ください。

いずれにせよここで1つ言えるのは、自分自身が「グッド・ピープル」になることこそが、「人脈」と「運」とを引き寄せる最大の方法であるということです。3時間管理を徹底すること時間を管理することは、セルフコントロールの一環でもあります。

時間は有限の資産です。誰にでも平等に1日24時間が与えられていますので、その時間をいかに有効に使うかが勝負の分かれ目となります。たいして内容のない飲み会に参加してはいつまでもダラダラと飲んでいませんか?

かわいいお姉さんの誘惑に負けてキャバクラやクラブに長居をしていませんか? 仕事が終わった後、やることもなく居酒屋で無駄に時間を過ごし、帰宅してそのままベッドにもぐりこんでいませんか?

投資の世界においても、人生においても、他の人と同じことをしていては人より抜きん出ることなどできません。他の人と違う視点と発想で物事をとらえ、他の人の何倍も工夫と努力をしてこそ、富への道が拓けるのです。

時間の管理も、言うは易し、行うは難し。慣れないうちはなかなか簡単ではないでしょう。でも、ぜひ心を強く持って、限られた時間を最大限に活用してみてください。

時間の管理については第6章でも触れていますが、私が心がけている何点かをここでいくつかご紹介しておきましょう。

・スケジュール管理を徹底し、組んだスケジュールに従って行動する

・食事会は滞在時間を決めて、時間を厳守する

・無駄な飲み会や食事会には最初から行かない

・事前に情報収集をして、いざという時にスムーズに行動できるようにしておく

 このようなことを心がけ、浮いた時間で行ってほしいのが、次のようなことです。

・セミナーや社会人大学に通って勉強する

・読書やネットで情報収集をする

・映画を観たりコンサートや美術館に行ったりして感性を磨く

・スポーツジムなどで運動をして体のメンテナンスをする

どれも、自分自身を豊かにしてくれることばかりです。居酒屋で同僚やサークルの仲間たちと愚痴を言い合いながらダラダラ朝まで飲んでいては難しいですね。

繰り返します。人と同じ時間の使い方をしていては、富を作ることなどできないのです。

2017年5月9日火曜日

日本にとって人手不足はどれほど深刻なのか 今後10年を見ると過度に悲観する必要はない

 最近、人手不足が日本経済の制約要因になりつつあるとの見方が増えている。

 失業率は完全雇用とされる3%程度での推移が続いていたが、2017年2月には2.8%と1994年12月以来の2%台に低下、3月も2.8%だった。また、有効求人倍率は2013年11月以降、求人数と求職者数が一致する1倍を上回り続け、2017年3月には1.45倍と約26年ぶりの水準まで上昇している。

 日銀短観2017年3月調査では、全規模・全産業の雇用人員判断DI(過剰-不足)がマイナス25で、バブル崩壊直後の1992年以来の人手不足感となっている。宿泊・飲食サービス、小売、運輸・郵便など労働集約的な業種が多い非製造業、人材の確保が難しい中小企業の人手不足感が特に強い。

 こうした中、スーパーや百貨店の営業時間短縮、ファミリーレストランの24時間営業の取りやめ、宅配業者のサービス縮小などが相次いでいる。
人手不足はどれほど深刻なのだろうか。

労働需要の強さが人手不足の主因
 人手不足は労働市場の需要が供給を上回る状態を示すため、需要の拡大によって生じる場合と供給力の低下によって生じる場合がある。

 「失業者=労働力人口-就業者」で表される。労働力人口は15歳以上の人口のうち、就業者と職を求めているが失業中の人の合計である。就業者が増加すれば失業者が減少することは言うまでもないが、労働力人口が減少しても失業者は減少する。実際、失業者は2009年7〜9月期の359万人をピークに8年近くにわたって減少を続けているが、2013年初めまでは高齢化の進展や職探しをあきらめる人の増加によって労働力人口が減少していたことが失業者の減少をもたらしていた。

 しかし、その後は就業者が増加に転じ、失業者減少の主因が就業者の増加に変わってきている。2016年10〜12月期の失業者数は204万人とピーク時から156万人減少した。この間に労働力人口は35万人増加しており、このこと自体は失業者の増加要因となるが、就業者が188万人増加したため、失業者が大幅に減少したのである。

 また、就業者数の伸びは自営業主、家族従業者が長期にわたって減少を続けていることによって抑えられているが、労働需要の強さをより敏感に反映する雇用者数の伸びが高い。2012年10〜12月期を起点とした今回の景気回復局面における雇用者数の増加ペースは1990年以降では最も速くなっている。

 
 さらに、内閣府の「企業行動に関するアンケート調査」によれば、今後3年間の雇用者数の見通しは、2013年度調査から4年連続で増加率を高めており、2016年度調査では2.5%となった。実質経済成長率、業界需要の実質成長率の見通しが1%前後でとどまる中、雇用者数の見通しの強さが際立っている。このことも企業の採用意欲の高さ、労働需要の強さを示したものといえるだろう。


高齢者と女性の労働参加で労働力人口は上振れ
 日本は少子高齢化が進む中ですでに人口減少局面に入っており、人口動態面から労働供給力が低下しやすくなっていることは確かだ。生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに20年以上減少を続けており、団塊世代が65歳を迎えた2012年以降は減少ペースが加速している。しかし、生産年齢人口の減少が労働力人口の減少に直結するわけではない。労働力人口は生産年齢人口に含まれない65歳以上の人がどれだけ働くかによっても左右されるためだ。

 労働力人口は1990年代後半から減少傾向が続いてきたが、2005年頃を境に減少ペースはむしろ緩やかとなり、2013年からは4年連続で増加している。15歳以上人口の減少、高齢化の進展が労働力人口の押し下げ要因となっているが、女性、高齢者を中心とした年齢階級別の労働力率の大幅上昇がそれを打ち消している。少なくとも現時点では労働力人口の減少が経済を下押しする形とはなっていない。

 
 団塊世代が2007年に60歳に到達することが意識され始めた2005年頃から、労働力人口の大幅減少を懸念する声が急速に高まった。しかし、65歳までの雇用確保措置を講じることが義務付けられた「改正高年齢者雇用安定法」が2006年4月に施行されて、2007年以降に団塊世代が一気に退職するような事態は起こらなかった。高齢者の継続就業とともに女性の労働参加が拡大したことも労働力人口の減少に歯止めをかけた。

 10年前の2007年12月に公表された厚生労働省の雇用政策研究会の報告書 では、2017年の労働力人口は「労働市場への参加が進まないケース 」で2006年と比べ440万人減少、「労働市場への参加が進むケース 」でも101万人減少すると見込んでいた。当時は筆者も含めほとんどの人は労働力人口が減少すること自体は避けられず、急速な減少に歯止めをかけることが課題と考えていた。

 しかし、実際の労働力人口は予想を大きく上回り、2016年には6673万人と2006年の6664万人から9万人の増加となった。「労働市場への参加が進まないケース」の見通しと比較すると2016年の労働力人口は400万人以上も多い。さらに、「労働市場への参加が進むケース」の見通しと比べても100万人程度上回っている 。

 
 なお、実質経済成長率の想定(2006~2017年の平均)は、「労働市場への参加が進まないケース」で0.9%程度、「労働市場への参加が進むケース」で2.1%程度となっていたが、実際の実質経済成長率(2006~2016年の平均)は0.5%であった。経済成長率は当時の想定を大きく下回ったにもかかわらず労働市場への参加が予想以上に進んだことになる。

潜在的な労働力はまだある
 このように、現時点では予想されていたほど労働供給力の低下は顕在化しておらず、労働需要の拡大が人手不足の主因となっている。これに対応するためには現在就業していない潜在的な労働力を活用することが不可欠である。

 潜在的な労働力として、まず考えられるのは、就業を希望しているにもかかわらず求職活動を行っていないために非労働力人口とされている人である。2006年の非労働力人口は4358万人だったが、このうち就業希望者が479万人(女性354万人、男性124万人)いた 。2016年の非労働力人口は4432万人となり、10年間で74万人増加したが、このうち就業希望者は380万人(女性274万人、男性106万人)と女性を中心に大きく減少した。労働力人口が10年前とほぼ同水準を維持しているのは、少子高齢化の進展で労働力人口の減少圧力が高まる中でも、就業を希望しながら非労働力化していた人の多くが労働市場に参入したためと考えられる。

 就業希望者の非求職理由をみると、女性は「出産・育児のため」が全体の3分の1を占めている。このことは育児と労働の両立を可能とするような環境整備を進めることで、非労働力化している女性の労働参加をさらに拡大することが可能であることを示している。実際の労働力人口に就業を希望する非労働力人口を加えて潜在的な労働力率を試算すると、女性は20~54歳の年齢層で80%台となるが、実際の労働力率は2016年時点では概ね70%台にとどまっている。

 男性については、25~59歳の労働力率が現時点で90%台となっているため上昇余地は小さいが、60歳以上の労働力率はさらなる引き上げ余地がある。

労働力人口を2026年まで維持することは可能
 ここで、4月10日に国立社会保障・人口問題研究所から公表された最新の将来推計人口をもとに、今後10年間の労働力人口を試算した。

 まず、悲観ケースとして、男女別・年齢階級別の労働力率が2016年実績で一定とすると、高齢化の影響で全体の労働力率は2016年の60.0%から2026年には57.4%へと低下する。15歳以上人口の減少ペースは今後加速するため、15歳以上人口に労働力率を掛け合わせた労働力人口は2026年には6200万人となり、2016年よりも473万人減少する(年平均でマイナス0.7%)。

 一方、楽観ケースとして、男女別・年齢階級別の労働力率が10年後には現在の潜在的労働力率まで上昇すると仮定すると、全体の労働力率は2016年の60.0%から2026年には62.1%まで上昇する(男性:70.4%→71.3%、女性:50.3%→53.5%)。15歳以上人口は大きく減少するものの、2026年の労働力人口は6706万人となり、2016年よりも33万人の増加(年平均でほぼ横ばい)となる。労働力率を潜在的な水準まで引き上げることができれば、今後10年間は少なくとも量的な労働供給力は低下しないことになる。

 
 もちろん、現在就業を希望している非労働力人口を全て労働力化することは現実的には厳しいかもしれない。ただ、過去を振り返ってみると、女性は現実の労働力率の上昇に伴い潜在的な労働力率も上昇している。このことは現時点の潜在的労働力率が必ずしも天井ではなく、様々な施策を講じることによりさらなる引き上げが可能であることを示している。

 また、日本の男性高齢者の労働力率は国際的にすでに高水準にあり、これ以上長く働くことは非現実的という見方もあるかもしれない。しかし、かつて日本の労働者(男性)は今よりも長く働いていた。1970年代前半まで男性高齢者の労働力率は60~64歳で80%台、65~69歳で60%台半ばと、現在よりも高い水準にあった。もちろん、当時は定年がない自営業者の割合が高く、現在とは労働市場の構造が異なっているが、平均寿命が当時から10歳以上延びていることからすれば、60歳以上の労働力率をさらに引き上げることは非現実的とはいえないだろう。

正規労働者への転換、労働時間の増加も有効
 雇用者数が高い伸びとなっているにもかかわらず人手不足が解消されない一因は、雇用者数に一人当たりの労働時間を掛け合わせた労働投入量があまり増えていないことだ。前述したように雇用者数の伸びは1990年以降の景気回復局面で最も高いが、非正規化の進展などにより一人当たり労働時間が減少しているため、労働投入量の増加ペースは1990年以降で最も低い。

 この問題を解決するためには、一人当たりの労働時間を増加させることも考えられる。働き方改革で長時間労働の是正が大きな課題となる中で、労働時間を延ばすことはこれに逆行すると思われるかもしれない。しかし、長時間労働の問題は一部の産業でフルタイム労働者を中心に過剰な残業をしていることであり、パートタイム労働者などの非正規労働者の中には就業時間の増加を希望する者も少なくない。労働力調査によれば、就業時間の増加を希望する就業者は全体では約6%に過ぎないが、非正規の職員・従業員は13%(269万人)が就業時間の増加を希望している。

 また、近年は「自分の都合のよい時間に働きたいから」などの理由で自ら非正規を選択した労働者の割合は増加傾向にある。しかし、その一方で「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由による不本意型の非正規労働者も全体の15%程度(296万人)存在する(いずれも2016年の数値)。

 すでに就業している人の労働時間を増やすことや、非正規から正規への転換は雇用者数には影響しないが、一人当たりの労働時間が増加することによって労働投入量を拡大させる効果がある。

 一部の業種で人手不足が事業の継続や拡大の支障となりつつあることは事実だが、当面は賃上げによる人材の確保、非正規労働者の正規労働者への転換などで対応することが可能だろう。また、ここまで見てきたように、人口の減少ペースは今後加速するが、潜在的な労働力を十分に活用できれば10年程度は現在の労働力人口の水準を維持することができる。人手不足による経済成長への悪影響を過度に悲観する必要はないだろう。

2017年5月8日月曜日

「メルカリに食われる」、リユース業界の悲鳴

 4月中旬、不要品を売りに大手リユース店を訪れた。

 業者側が提示した買い取り価格はブランド物のネクタイが1000円、大型ブリーフケースが3000円。数年前にセレクトショップで購入したストールはわずか1円だった。

【図表】実際に売ってみたら・・・メルカリでは大手買い取り価格の数倍で売れた!

 そこで買い取りをあきらめ、フリーマーケットアプリ『メルカリ』で販売したところ、ストールは売れ残ったが、そのほかは業者の提示価格の数倍であっという間に売れた。

■昨年8月から市場が急変している

 デフレ時代の勝ち組として好調を維持してきたリユース業界に異変が生じている。業界大手、トレジャー・ファクトリーの野坂英吾社長はこう語る。「買い取りはこれまで順調に伸びてきたが、昨年の夏場以降、急速に環境が変わった」。

 ゲオホールディングスが500店超を展開する「セカンドストリート」等の既存店売上高は昨年8月以降、10月、12月を除き前年割れ。ハードオフコーポレーションやトレジャー・ファクトリーも低迷が続く。中古本最大手のブックオフコーポレーションだけが、2015年度から本格化した家電の貢献で前年並みを確保している状況だ。

 当初、業界では中国人観光客の"爆買い"の終焉や天候不順によるアパレルの販売不振など一時的な現象との見方が大半を占めていた。が、不振が半年以上に及んだことで、急速に危機感が広がっている。

商材の確保が滞っている

 リユース業界は幹線道路沿いに大型店を設け、家族層を主要顧客とするビジネスモデルで成長してきた。ハードオフの場合、フランチャイズ(FC)を含めた2015年度の販売総額は522億円、一方の買い取り金額は173億円。在庫リスクや店舗運営費を賄うためには買い取り金額を抑えざるをえない。それでも消費者の支持を受けて成長してきた。

 それが一転不振に陥ったのは、売り上げの源泉となる商材の確保が滞っているためだ。百貨店や専門店で新品販売の低迷が長期化しており、主力のアパレルの仕入れに影響が出ている。

 もう一つは「メルカリをはじめネット上での個人間売買が広がり、実店舗からシフトしている」(ハードオフの長橋健専務)ことだ。

■フリマアプリ市場は3000億円に

 これまで業界では、実店舗で日用品が売買され、ヤフオク! などネットではコレクション性や趣味性があり、高値で売買されるものが中心となるため、両者はすみ分け可能だとみられていた。実際、1999年にサービスを開始したヤフオクは取扱高8966億円(2016年度)を誇るが、その間リユース業界も拡大を続けてきた。

 ところが、13年にメルカリがサービスを開始すると市場は一変。冒頭のように高値で手軽に日用品を売買できることが若い女性を中心に支持を集め、メルカリの取扱高はわずか3年で推計年間1200億円超に成長、フリマアプリ市場も3000億円(2016年、経済産業省推定)に達した。

 メルカリが急成長を遂げたもう一つの理由は地方にある。オークション、ショッピングサイトの情報・価格検索や解析を専門とするオークファンの田島宜幸執行役員は「メルカリは地方在住ユーザーの出品で拡大している」と分析する。同社によれば、地方在住者はヤフオクよりも、メルカリの利用比率が高いという。

 

地方ユーザーがメルカリに流れ込んだ

 また、メルカリによれば、利用比率が高い都道府県(昨年12月時点)は東京や大阪に加え、沖縄、北海道、宮城、青森などだった。同社もこうした地方に照準を合わせ、テレビCMを放映している。

 これまで地方のユーザーが日用品を売る場合、地域密着のリユース店しか選択肢がなかった。だが、「地方のユーザーがメルカリに流れ込み、リユース業界は仕入れ環境が厳しくなったのではないか」(田島氏)

 こうした分析を裏付けるように、四国や九州でブックオフやハードオフのFCを展開するありがとうサービスの既存店売上高は、両社の直営店の数値を下回る苦境が続いている。

■ゲオは怒濤の出店攻勢

 リユース業界も手をこまぬいているわけではない。ゲオホールディングスは、既存店の落ち込みは出店加速に伴う商材供給の逼迫や自社競合が要因と説明する。「フリマアプリと比べて、すぐに換金できる利点は失われていない」(会社側)。今後もセカンドストリートを年間100店近い積極出店を進める方針だ。

 トレジャー・ファクトリーや業界中堅の買取王国は、商材を確保するため宅配買い取りを導入した。

 このほか、買い取り専門店を出店したり、ブックオフのように百貨店など提携先に買い取り窓口を開設するなど、各社は新たなルートの開拓を急いでいる。

 ネットと実店舗を合わせたリユース市場は2015年時点で1.65兆円(リサイクル通信調べ)に達した。急成長を遂げるメルカリとどう戦うのか。リユース業界は正念場を迎えている。

 

週休3日制は定着するか?週休2日の歴史から考える

政府はこの3月に時間外労働時間の上限規制を設ける方針を決め、現在は労働基準法の具体的な改正案を詰めているところです。

しかし、「18時間、週に40時間」という法定労働時間の規定は、当面変わることはないでしょう。「週40時間」の元には、「週に5日働き、2日休む」という考え方があります。今やすっかり当たり前のように感じられる週5日勤務・週休2日制はいつ頃から定着したのでしょう? その歴史を振り返り、「週休3日」などの新しい概念が広まっていく可能性について考えます。

「週5日勤務・週休2日制」の歴史

週休2日制を最初に導入したのは自動車のフォード

アメリカで最も早く(おそらく世界的にも先陣をきって)週休2日制を導入したのは、自動車メーカーのフォードの創設者のヘンリー・フォードだと言われています。

工場の労働者には1926年の51日から、事務員には同年8月から、18時間・週5日の40時間労働制を導入——、このフォードの動きを受け、多くの製造業が週休2日制に移行し、それが今日のスタンダードになったといいます。

他の会社がフォードの動きを追いかけた背景には、フォードがその前に行った賃金引き上げの成功があったからかもしれません。フォードは1914年に、19時間の労働に対して2.34ドルだった最低日給を、8時間で5ドルにしました。このことは業界に激震をもたらしましたが、フォードの熟練工達は会社に愛着を持ち、定着率が高まったため、職業訓練コストの低下、生産性の向上という大きな効果を産んだのです。

フォードは、労働者がお金を稼ぎ、余暇の時間を持つことが消費を喚起し、経済の発展につながると考えていました。実際、大量生産による低価格化とあいまって、それまで富裕層のものだった自動車は、一気に大衆に普及したのです。「余暇を増やせばモノが売れる」という考えは今年2月から始まった「プレミアムフライデー」も同じです。しかし、一般の人達が物や娯楽に飢えていたヘンリー・フォードの時代と違いますし、余暇が増えても収入は増えないという状況にあっては、同じような効果を求めるのは難しいでしょう。

日本では50年前に松下電器が導入

松下電器産業 創業者の松下幸之助氏(Wikipediaより)

日本では、1965417日に松下電器産業(現パナソニック)が週休2日制を導入したのが、最初の事例と言われています。

産経新聞の記事によれば、きっかけは創業者 松下幸之助氏の米国視察。週休2日でかつ日本よりも高額の給料を支払いながら収益を上げている米国流のやり方に感心し、「海外企業との競争に勝つには能率を飛躍的に向上させなくてはいけない。そのためには休日を週2日にし、十分な休養で心身の疲労を回復する一方、文化生活を楽しむことが必要だ」と、週休2日制の導入を宣言したそうです。

80年代後半から徐々に「週休2日」が浸透

松下電器は労働日を減らしても生産性を上げ、大きな成長を遂げました。しかし、週休2日制が日本全体に広がるのには、30年程度かかっています。

今から30年前の1987年に労働基準法が改正(1988年施行)され、労働時間の規定は「18時間、週48時間以内」から「18時間、週40時間以内」に変わりました。この背景には、貿易摩擦により海外から「日本は働きすぎ」という批判が巻き起こっていたことがあります。これを緩和するため、国は当時 2,100 時間前後だった年間総労働時間を1,800時間程度に引き下げることを目標に様々な施策を打ったのです。

労働基準法の改正と同時に日本中が週休2日に——、というわけではなく、移行措置を経て、今からちょうど20年前の19974月に全面的にルール化されることになります。

大きなトピックとしては、19892月から銀行など金融機関が、土曜日の窓口業務を中止しました。また、19925月から、国家公務員も完全週休2日となりました。また、2002年度から公立学校に週5日制が導入されたことも、「土曜と日曜は休み」という意識が浸透した大きな要因でしょう。

週休を増やそうという動きはなぜ起きているのか

昨年、ヤフージャパンが「週休3日制」を導入する意向を発表し、世間の話題をさらいました。有名なところだと、ユニクロを展開するファーストリテイリングは、転勤のない「地域正社員」に対して「110時間×週4日勤務」の週休3日制を導入済みです。

このような、休日を増やそうという動きはなぜ起きているのでしょうか?

技術の進歩で人間の働く時間は減るはず!?

書籍『フリーエージェント社会の到来』(ダニエル・ピンク著)には以下の一説があります。

1967年にアメリカ上院の公聴会で発言した専門家は、20年以内にアメリカ人の平均労働時間は週28時間にまで減るという予測を示した。未来学者のハーマン・カーンも同じ年に、生産性の向上により、労働時間は、2000年には週20時間で十分になるという予測を披露した。

出典:『フリーエージェント社会の到来 新装版』(ダニエル・ピンク著)

18時間働くとして週28時間なら週休3.5日、週20時間なら週休4.5日と、半分以上休めるという計算ですね!

結局これは当たらなかったわけですが、こういう予測の根拠には、「技術革新による生産性の向上で、もっと短い時間で仕事が済むようになる」という考え方があります。確かに、上の予測が披露された50年前にはインターネットもなかったので、当時何日もかけてやっていたけれど今なら一瞬で済むという仕事は多いでしょう。でも、時代とともにビジネスのスピードが速まり、やるべき仕事がどんどん増えていったおかげで、私達は全く暇にはなっていないのです。

ただ、今は「第4時産業革命」の時代で、人工知能(AI)やロボット等の技術が、1819世紀の産業革命以来の大変革をもたらし、今度こそ私達の仕事はどんどん減っていくと予想する人もいます。

昨年あたりは、「AIによってなくなる仕事リスト」のような記事を多く目にしましたが、最近は少しトーンダウンして、「そんなに急激に仕事がなくなるわけじゃない」という意見が増えてきました。つまり、技術的には「AIやロボットができる仕事」は増えるとしても、実際に人間と機械を交代させるにはそのためのコストもかかるし新しい技術に対する心理的ハードルもあり、「"できる"と"やる"は違う」というわけです。

日本、あるいは世界全体で急激に仕事がなくなるということは当面なさそうですが、一企業の単位ではそれが起きる可能性があります。ヤフーの宮坂社長のインタビューなどを読むと、「機械にできる仕事は機械に」というシフトを積極的に「やる」という姿勢を打ち出しています。

人手不足への対応

ヤフーの場合、週休3日制など、よりフレキシブルな働き方を可能にすることで、生産性、社員の生活の豊かさや創造性を向上させるという狙いがあるようです。ただ、これは長期的なビジョンであって、短期的には柔軟な働き方を許すことで人材をつなぎとめたいという意図があるのでしょう。4月からは、育児や介護が理由で希望する一部の社員に週休3日制を導入していますが、これは正に、離職防止の施策と言えます。

また、日本では非正規雇用者の数が増加しています。その人達の中では、実質的に週休3日以上を実現している人も多いでしょう。正社員の雇用においても、少子高齢化で働き手がどんどん減っていく日本では、まずは「人材獲得」を目的に、週休を増やす動きが広がるかもしれません。

不況への対応

労働時間の短縮について考えるときに、よく注目されるのがオランダの働き方です。

オランダでは、1970年代のオイルショック後の不景気を抜け出すため、政府と労働組合、企業の三者が合意し、協力して経済を立て直しました。その大きな勝因は、「ワークシェアリング」であったと言われています。企業は短時間労働者を多く雇うことで雇用を創出し、労働者は労働時間短縮による収入減を受け入れ、政府は緊縮財政で減税と社会保障負担を削減することで、それを支えました。

つまり、人手不足の逆、高い失業率(=人が余っている状態)を解消するのに、ひとりひとりが働く時間や日数を少なくしたのです。

OECD2015年の統計で、年間の総労働時間は、同じくワークシェアリングが浸透しているドイツに続き、世界で2番目の短さ。2013年の『CNN Money』の記事によると、特に働く母親にとっては週休3日はほぼスタンダードで、前年に雇用された母親の約86%が週34時間以内、父親のうち約12%も短時間勤務をしていたとのことです。

父親が育児のために仕事を休む日を「papadag(パパの日)」と言い、週に1日これを取得している人も多いのだそう(参考:大きくなってもパパと仲良し!オランダ流・父子関係に見る、育児と仕事のバランス)。

オランダは、日本の「働き方改革」における重要キーワードのひとつ「同一労働同一賃金」という点でも、非常に注目されています。というのも、パート労働者にもフルタイム労働者と変わらない待遇を約束していることが、ワークシェアリングの大きな推進力になっているからです。

「前向きに仕事を減らす」という考え方

オランダは、ユニセフと国立社会保障・人口問題研究所が2013年に公表した「子どもの幸福度調査(日本との比較 特別編集版)」で第1位、国連の2016年版「世界幸福度報告書」においては幸福度ランキングで7位、最も平等な(幸福度にばらつきがない)国ランキングで3位に位置しています(日本はそれぞれ6位、53位、50位)。

幸福度調査は様々な要素を加味して行われているものですが、オランダが評価される一つの要素としてワークライフバランスの取りやすい働き方があることは、間違いないでしょう。

大分県国東市にあるアキ工作社という会社では、2013年から週休3日制を取り入れ、それが良い効果を上げていることから、同地域の他の企業にも週休3日制が広がりつつあるそうです。アキ工作社では1日当たりの労働時間を増やすことで、週40時間を維持しているそうですが、丸1日休める日を増やすことで、社員のモチベーションの向上が生産性の向上へとつながり、残業および総労働時間が減っているとのこと(参考:週休3日制、大分の半島で 東京と違う働き方模索 (朝日新聞))。

「日本人は働きすぎ」という批判を受けて導入された週休2日制ですが、それが定着した今、私たちはもう一歩、仕事以外に使える時間を増やす努力をしてもよいのではないでしょうか。

AIやロボットが人間の仕事を代替するという話はネガティブに捉えられがちですが、そういった技術も活用し、より人間らしい「くらしと仕事」を手に入れていく——、そんな前向きな姿勢が、個人にも企業にも求められていくのだと思います。