中国からニューヨーク市に来た移民の血液中に含まれる鉛、カドミウム、水銀の量はその他アジア地区からの移民に比べて高い。例えば鉛は44%高い。研究論文は、この状況は憂慮すべきものだが、いくつかの措置を講ずることにより、その先行きは恐ろしいものではないとしている。
折しも、中国では5月に広東省でカドミウム汚染米が市場に流入していることが判明し、大きな問題として中国全土に波紋を投げかけた直後であり<注1>、多くの中国メディアがこの短い記事に注目した。そこで、彼らが当該研究論文の原文に遡って内容を確認した結果、以下のような詳細が判明したのだった。
<注1>2013年5月31日付の本リポート「広東省の人々を不安に陥れたカドミウム汚染米」参照。
【1】当該研究論文は、ニューヨーク市にあるコロンビア大学の公共衛生学院の研究者が、2004年の『ニューヨーク市の健康診査と栄養調査報告』(以下「調査報告」)のデータを分析・研究した内容をまとめたものである。
【2】調査報告はニューヨーク市へ来た移民の中から年齢が20歳以上の1999人を抽出して調査したものであった(以下「全移民」)。その中には、中国から来た移民(以下「中国移民」)が87人、その他のアジア地区から来た移民(以下「アジア移民」)が173人含まれていた。なお、中国移民には香港、台湾、マカオ生まれの人は含まれていないし、中国移民の大多数は福建省出身者によって占められていた。
【3】研究者が注目したのは、中国から来た移民の血液に含まれる重金属(鉛、カドミウム、水銀)の濃度が高いことであった。具体的に言うと:(1)鉛の血中濃度:中国移民は全移民より81%高く、アジア移民より44%高い。(2)カドミウムの血中濃度:中国移民は全移民より69%高く、アジア移民より60%高い。(3)水銀の血中濃度:中国移民は全移民の正常値より10%高い。
【4】研究者は、中国移民の場合、重金属の血中濃度が高い理由を次のように考えている。(1)水銀の血中濃度が高いのは、彼らの食生活が野菜や海産物に重点を置いていることに関連している。このため、彼らは心臓疾患のリスクは低いが、水銀の血中濃度は高い。(2)鉛やカドミウムは、体内に蓄積されるには非常に長い時間を要するので、彼らが米国へ来る前の中国国内における生活と関係があると考えられる。なお、鉛は中国の伝統的な薬に含まれているので、その影響も否定できない。
上記の研究論文は2004年の調査報告のデータに基づくものであり、すでに10年が経過している。10年後の今日、中国における重金属汚染の状況はさらにその深刻度を増していることは言わずもがなの話である。その実態を中国のメディアが報じた関連記事から検証してみると下記の通りである。
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