2013年6月11日火曜日

「グローバル人材の育成=英語力の強化」なのか?

 経済産業省が行った「大学におけるグローバル人材育成のための指標調査」の結果から紹介する。この調査では、企業におけるグローバル人材の定義を次のように規定している。

(1) 現在の業務において他の国籍の人と意思疎通を行う必要がある
(2)意思疎通を英語で(あるいは母国語以外の言語で)行う必要がある
(3)ホワイトカラー職(※)の常用雇用者である
※ ここで「ホワイトカラー職」とは、管理的職業従事者、専門的・技術的職業従事者、事務従事者、販売従事者をさす。

 この定義に基づき、企業を対象にヒアリングとアンケート調査を行った(実施期間2012年2月、5000社に送付し、回答のあった841社が対象)。さらに、アンケート結果に基づき、独自の手法で企業全体の総常用雇用者数に占める、2017年度のグローバル人材率の平均値なるものを出している。

 その結果、2012年時点で、4.3%だったグローバル人材率は、2017年には8.7%と2倍近くに上昇。企業規模別には、「299人以下」の企業が5.6%から7.2%、「300人〜1999人」の企業が6.9%から8.7%、「2000人以上」が11.0%から17.8%と、企業規模が大きいほどグローバル人材率が高く、5年後には全体的に高まる傾向にあった。

 ちなみに、「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている英語力を、入社前に身に付けて欲しい」という企業に限ってみると、2000人以上の大企業で2012年時には26.1%だったものが、2017年には42.9%と半数近くにまで上昇するとの結果が示されている。

 つまり、「大企業に入るには、英語力を高めておくことは避けては通れない」とも受け取れる内容だ。

 だが、その一方で、グローバル時代における新卒社員に求められる能力はというと、上位3位を、「主体性」「規律性」「好奇心・チャレンジ精神」が占めた。

 「2000人以上」の企業に限ってみても、「主体性」が91.3%でトップ。次いで、「好奇心・チャレンジ精神」(90.1%)、「規律性」(81.3%)となり、「TOEIC730点以上相当」を必要としたのは、わずか27.3%。アンケートに提示した17の能力のうち最下位だったのである。

 ただ、1つだけ日本で働く以上に、繰り返すが、「日本で働く以上に」、必要なものがあるとするならば、「たった1人でも、完全なるアウェーでも、どうにかしてその場で、限られた資源の中でベストと思える答えを探り出す力」。自律性(autonomy)だ。

 自律性は、「自分の行動や考え方を自己決定できているという感覚」で、自分を信じることで、目の前にあってできることを1つひとつ進め、自分の強みを進化させる動機付け要因となる。自分を信じる力は、何ごとにも優るエネルギーを引き出す。

 誰も助けてくれない。たった1人。その状況でも、「これでよし」と自分の行動を決められる「自律性」なくして、世界では太刀打ちできない。

 以前、ある雑誌で別の連載をやっていた時に、企業のトップや新しいことを成し遂げた方たちをインタビューさせていただいたのだが、そのほとんどの方たちが、高い自律性を持っていた。

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