2013年6月13日木曜日

どんな部下に対しても仕事を教え、育てる

 「どんな部下に対しても仕事を教え、育てる」という上司として当たり前のことができなくなるのは、多くの場合、感情に引きずられているからです。人間ですから、感情があるのは当然ですが、それは脇に置いておきましょう。

 感情の代わりに、あなたの目の前に「育成設計書」を置きましょう。育成設計書があれば、あなたの指導も、それに従う部下の行動も、極めて科学的かつ理性的なものになります。本当に部下が育つ指導が可能になります。

 育成設計書とは、その名の通り、部下を育成するための設計書です。設計図なしに家が建てられないのと同じように、設計書なくして正しく部下を育てることはできません。

 私が企業でアドバイスをするときは、次のような育成設計書を用いています。
目標、期日、貢献を書き出し、署名する

【サイズ】
 一目で全体を見渡せた方がいいので、A4くらいのプリント一枚にします。

【成果・目標】
 まず最初に「部下に期待する成果・目標」を記入します。その部下に「こうなってほしい」「こう成長してもらいたい」と思えることを書き込むのです。

 漠然としたものではなく具体的なものに落とし込んでください。業種によって様々ですが、例えば以下のようになります。

 「自社製品について正しい知識を身につける」
 「新企画の提案ができるようになる」
 「一人で顧客訪問ができるようになる」
 「月に平均3件の契約を取れるようになる」

 「あれもこれも」と入れ込むと焦点がぼけるので、その段階での小さな成果・目標を選んだ方がいいでしょう。

【期日】
 目指す「達成期日」を書き込みます。期日は絶対に必要です。

【貢献】
 次に「この成果・目標が達成されることで、部下は会社やお客様にどのような貢献ができるか」を具体的に書きます。

 この項目も非常に重要です。部下は会社や顧客に評価されることを望んでいます。しかし、自分の仕事がまだ小さいものであるため、「何のためにそれをするのか」がなかなか自覚できません。「本当に役に立っているんだろうか」と不安を抱えています。

 上司の言う通りに動き、上司のコマにされているように感じることもあります。それでは、部下のモチベーションは保てません。だから「貢献できる」ことが明確に部下に伝わるように書き込んであげましょう。

 つまり、この育成設計書は、あなただけが見るのではなく、部下と一緒に使うものだということです。上司と部下が一緒に考え、一緒に成長していくためのものだと考えてください。

【署名】
 「部下の氏名」「上司の氏名」「責任者の氏名」をそれぞれ書き、捺印する欄を設けます。責任者とは、上司であるあなたのさらに上司ということになるでしょう。つまり、あなたは「私は部下をこう育成します」と会社に宣言することになります。

【支援】
 さらに「この成果・目標の達成のために上司が"事前に"サポートしてあげること」「この成果・目標の達成のために上司がサポートしてあげること」という欄を設け、それぞれ3項目くらいずつ書き込みます。

 事前にサポートするのと、それ自体をサポートするのでは違います。上司であるあなたには、様々な側面からのサポートが求められているということです。

【褒美】
 「この成果・目標が達成されたときのご褒美」という欄も用意しましょう。ご褒美といっても、必ずしも金銭を伴わなくても構いません。「トップの成績を上げている先輩との面談の機会をつくる」「セミナーに参加するための休暇を与える」といったものが考えられます。金銭を伴う場合は「達成のお祝いに一杯おごる」くらいでいいでしょう。

 育成設計書には以上のような項目があればいいのですが、成果・目標をより小さく分解していけたら理想的です。成長計画をさらに3つくらいに分解し、それぞれについて成果・目標と期日を設定するのです。

 例えば、「自社製品について正しい知識を身につける」という成果・目標を立てたとします。それを分解すると「A商品」「B商品」「C商品」と商品ごとの成果・目標が考えられるかもしれません。

 「新企画の提案ができるようになる」という成果・目標なら、「5つのライバル商品を分析する」「週に2つはアイデアを出す」「2週間に1本は必ず企画書を作って提出する」といった段階を踏んだものに分解できるかもしれません。このように数値を入れるとより明確になります。

 分解した一つひとつの成果・目標を同時にこなすことはすぐには無理です。たびたびチェックし、「◎」「○」「△」「×」などで評価しましょう。「◎」が付けば、その成果・目標をこなせたことになります。

 ただし、「◎」「○」「△」「×」といった評価は、部下に点数をつけるためにするのではありません。「×」(できない状態)から「△」(ややできる)、「○」(ほぼできる)、「◎」(完全にできる)まで順に導いてあげるためのものです。

 分解した成果・目標がすべて「◎」になれば、「自社製品について正しい知識を身につける」「新企画の提案ができるようになる」といった当初の成果・目標はクリアされるはずです。

 クリアできたら、約束したご褒美を与え、次なる育成設計書をつくりましょう。この時には、よりレベルの高い育成設計書となるでしょう。

 こうしたことを繰り返しているうちに、部下は必ず大きく成長していきます。クリアされていった何枚もの育成設計書が、部下の財産になることは間違いありません。

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