2017年11月6日月曜日

登場!AI先生 教育はどう変わる?

鈴木
「AI=人工知能についてです。
この番組でたびたびお伝えしていますよね。」

河野
「囲碁や将棋でプロ棋士を破ったり、恋愛相談に乗ってくれたりするAIというのもありましたね。」

鈴木
「そして今日(9日)は、勉強を教えてくれる『AI先生』の登場です。
生徒の評判は、どうなんでしょうか?」

生徒の評判は? どうなる?人間の先生

リポート:松井裕子記者(社会部)

東京・世田谷区にある学習塾です。

生徒は黙々とタブレット端末に向き合い、AI先生の指導を受けていました。
人間の先生からの指導は、ほとんどありません。
生徒はどう感じているのでしょうか。

生徒
「『AIの先生』とどっちが自分を分かってくれるかと言うと、『AIの先生』のほうが早く分かって早く直せる。」



 

AI先生は、それぞれの生徒の習熟度に合わせ、いわば「個別指導」を行っています。

この生徒に出しているのは、エックスの解を求める、方程式の問題。

生徒は、計算途中の式を答えとして記入したために、不正解となりました。

するとAI先生は、生徒がどこでつまずいたのかを気づかせるための別の問題を、すかさず出します。





生徒は間違えやすいポイントに気づき、正しい答えの出し方にたどりつくことができました。





AI先生が持つ問題のレパートリーは、およそ1万。
そこから、各生徒に最適な問題を出題することで、効率的な学習を可能にしています。

中学1年生のこの生徒は、すでに3年生の問題に取り組んでいます。

生徒
「これだと、立ち止まって復習して、分からないところを無くしてから先に進める。
どんどんできるようになる。」

 

実はこの塾、AIの教材を開発している会社の一角にあります。
社長の神野元基(じんの・げんき)さんは、以前は一般的な塾を経営していましたが、最も効率的な学習方法を模索する中で、AI先生にたどりついたといいます。


 

AI教材会社 社長 神野元基さん
「一人一人に最も最適な問題を出したら、本当はもっと上がる。
一気に勉強するということに関しては、人工知能が最も優れている。」


 

AI先生の登場によって、講師の役割は大きく変わっていました。
以前は数学を教えていたというこの講師。
今は、AI先生からリアルタイムで送られてくる生徒たちの状況をチェックするのが主な仕事です。


 

「手が止まっている」といった指摘や…。




 

独自に算出した、集中度を表すグラフを見守っています。

講師
「集中力が下がってしまっている場合は声をかけて、リフレッシュさせてあげたりとか。」

講師
「難しい?順調?」



 

現在、AI先生は数学を教えることしかできませんが、神野さんは、ほかの教科にも広げていきたいと考えています。

AI教材会社 社長 神野元基さん
「今までの、国語・数学・理科・社会・英語みたいなものを一番効率良く学習しようと。
ゆくゆくは、公立の小学校だとか中学校にもアプローチできたらいい。」

今後の普及は 人間はどうなる?

河野
「ここからは、取材にあたった社会部の松井記者とお伝えします。
AI先生、すごくおもしろかったんですが、実際に教育現場ではどれぐらい広がっているんですか?」


 

松井裕子記者(社会部)
「すでにほかの塾でも導入が進んでいるんですが、利用している生徒はまだ500人程度です。
ただし、AIの進歩の早さを考えると、今後、教育分野にも急速に普及することは避けられないのではと思います。」

鈴木
「そうすると気になるのは、人間の先生の役割はどうなってしまうんだろうということですよね。」

松井記者
「このAI教材を開発した会社によると、今のAI先生では、生徒たちがみずから思考する力や、周りの人と意見を交わしながら協力する力を育てることは難しいということです。
AI先生ができないことをどう指導していくかが、まさに人間の先生の腕の見せどころで、その模索が始まっているんです。」

何を教えるのか 始まった模索

中学校の理科の授業です。





教室には、6台のカメラが並んでいました。
AI時代に先生が何を教えるべきか、東京学芸大学が行っている研究です。

東京学芸大学 鎌田正裕教授
「知識だけ与えておけばいいという時代ではなくなった。
授業の中でどういうスキル・キャラクターが身につくか。」


 

教員には、ふだん通りに授業を行ってもらいます。
この日の課題は、プラスチックの種類を、実験を通して特定することです。





教員は、子どもたちに具体的な実験方法をあえて指示しませんでした。
子どもたちは、どんな実験方法が適切か自分たちで考え、話し合っていきます。

複数の方法から、よりよいものを相談しながら1つにまとめ上げていきました。
研究チームが観察していたのは、生徒が主体的に考える力や、ほかの生徒と協力する力を引き出しているかどうかです。




研究チームは、活発な意見交換が行われた今回のような授業こそ、AI時代に求められると教員に伝えました。




 

東京学芸大学 鎌田正裕教授
「授業で実験方法を考えさせる場面設けることが、先を見通す力を育成する場面になっていて、そのひとつの典型がここに出ている。」



 

�田太樹教諭
「子どもたちのために教員がやるべきこと、もしくはデジタルに任せられるところはある。
こういうスキルを育てたいとかは常に考えていかないといけない。
負けたくないっていうのも、もちろんある。」

AIと人間 生徒のために

河野
「『負けたくない』と人間の先生が言っていましたが、今のリポートを見ていますと、これからの『人間の先生』というのは、単に知識を教えるだけではやっていけないというのがよくわかりますよね。」


 

松井記者
「AI時代に、先生の役割が変わっていくというのは避けられないと思います。
これを脅威に感じる人もいるかもしれませんが、生徒にとっては必ずしも悪いことばかりではないと思います。
AIに任せられることは任せることで、先生にできることが広がっていくということもあるんです。」

鈴木
「つまり、知識を教える以外のことに、人間の先生は力を注げるということですよね。」

松井記者
「そうですね。
さらに今、先生は、いじめや不登校などさまざまな問題に直面していて、多忙で時間もないと言われています。
AI先生をうまく活用すれば、その分、時間に余裕ができて、よりきめこまやかな教育を行うことも考えられると思います。
生徒のためになるAIと、人間の共存のあり方を探っていく必要があるのではないかと思いました。」

 

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