2018年11月27日火曜日

LINE---急伸、中国テンセントとの提携が伝わる

LINE<3938>は急伸。中国ネットサービス大手のテンセントと提携、2019年から訪日中国人客にスマホ決済サービスを提供すると報じられている。小売りや外食の店舗に専用端末を置けば「ウィーチャットペイ」が使えるようになる。訪日客を呼び込みたい中小店舗の囲い込みが狙いとなる。テンセントのユーザー数は8億人とされており、アリババなども上回る。「LINEペイ」の導入も進んでいくとの見方が優勢に。

2018年11月22日木曜日

ルノー・日産・三菱連合は崩壊に向かう公算大

 11月19日の月曜日。日産のカルロス・ゴーン会長と、グレッグ・ケリー代表取締役が東京地検特捜部によって逮捕された。速報を見た瞬間、「まさか、何かの間違いでは」と思ったほど、寝耳に水の逮捕劇だった。

 ただ、逮捕日直前の週末くらいから、東京地検に妙な動きがあるという情報はキャッチしていた。地方から続々と応援部隊が集結しているというのだ。こういうときにはただでさえ口の堅い検察関係者も一層堅く口を閉じ、内部から情報が漏れてくることはまずない。「近々、何か大きな案件に取り掛かろうとしているのか」と推測はしていたが、その矛先がまさか日産に向いていたとは想像していなかった。

針の穴に糸を通すような立件手法
 カルロス・ゴーンとグレッグ・ケリー。百戦錬磨の経営者と弁護士出身のビジネスエリートである2人に、一切の動きを悟られないように、東京地検特捜部は相当慎重な捜査と内部調査を重ねてきたのだろう。

 逮捕のタイミングもそのことをよく表している。海外に出ていた2人が、月曜日にプライベートジェットで帰国したところを見計らって地検が接触し、事情を聞くという段取りを踏んでいる。ゴーン、ケリー両氏に悟られないようにすることを何よりも最優先させた捜査だったと言えるだろう。

 ただし、立件の仕方を見ていると、針の穴に糸を通すような、かなり難しいやり方をしている。

 今回、ゴーン氏らの行為で問題視されているのは所得の過少申告だ。過少申告なら本来は所得税法違反、つまり「脱税」で立件するのが一番オーソドックスなやり方だ。だが、最初の段階でそれはできなかった。というのも今回の件については、国税が先に動いて検察が受けたという案件ではない。入り口から逮捕まで特捜部主導でやっている。日産社内からの内部告発を受けて、日産サイドの全面協力を得て情報を提供してもらって特捜部が立件したわけだ。

 その過程の中で司法取引が行われ、実際に「所得隠し」の実務を担当した日産社内の社員・役員に関しては、刑事的責任を問わないということを前提に情報を出してもらってきた。

 その捜査の中で、最も確実に立件でき、事件の入り口として最も適当だと判断されたのが、有価証券報告書虚偽記載という「金融商品取引法違反」だったのだろう。

 もちろんこれは全くの"別件逮捕"というわけではないが、あくまでも形式的な犯罪だ。

 つまり、もしも「意図的に所得を隠していた」ということであれば「脱税」による所得税法違反だし、「本来受け取るべきでない報酬であるにも関わらず受け取った」ということであれば、会社に損害を与えたということで「特別背任」による商法違反も成り立つ。場合によっては「横領」という形にもなる。

 いずれにしても本来なら、脱税や特別背任、横領などを問うべき案件なのだが、今回東京地検は、「まずはやり易い金商法違反でとりあえず身柄を確保し、取り調べをしかりやって解明していこう」という方針を立てて、形式犯のところから入ったのだ。

 全容解明のためには、今後の捜査で「本人たちがどの程度の意識をもってやったのか」というところをどこまで詰められるかが焦点になる。

ゴーン氏の刑事責任を追及せざるを得なかった事情
 逮捕容疑の中身をもう少し詳しく見てみよう。

 ゴーン氏の報酬として総計でおよそ50憶円、有価証券報告書で過少に記載されていた、ということであるのだが、報道を見て、もしかしたら一般の新聞読者やテレビの視聴者の中には、キャッシュ、あるいはキャッシュに近い株券や債券がゴーン氏の懐に入ったと思っている人もいるかもしれない。

 そうではない。日産が、オランダに設立した子会社に投資資金として回ってきたお金を使って、事実上、ゴーン氏専用の邸宅を、レバノン、ブラジル、オランダ、フランスの4か所で購入していて、それをもっぱらゴーン会長及びそのファミリーが利用していた。日産の金でゴーン会長の邸宅を買ったわけだから、事実上、ゴーン会長に対する形を変えた報酬ということになる。

 報道ベースではまだ判然としていないが、これらの物件の所有者が誰になっているのかも一つの焦点になる。日産の金で購入した邸宅をゴーン氏にあげたということになれば、その購入額が丸ごと報酬になる。あるいは物件の所有名義が日産になっていれば、利用した期間に応じ、本来払うべきだった賃料の合計が報酬となる。

 いずれにしても、購入資金なのか賃料なのか、その合計がマックスで50億円ほどになるということだ。その額が有価証券報告書に記載されていなかったということであり、ゴーン氏の懐や銀行口座に50憶円ほどのキャッシュが転がり込んだ、というわけではない。

 そういった意味では、日産側の「被害額」はまだ正確には確定していないと言える。脱税は金額の確定がないと立件できない。特別背任も、会社が被った損害額が確定しないと立件できない。横領も同様だ。つまりいずれにしてもそうした犯罪を立件するためには金額の確定が必要となってくる。それゆえに入り口の段階では、その種の犯罪を逮捕容疑にするのは難しかったのだろう。

 ところが有価証券報告書の虚偽記載は、記載された内容に間違いがあったら立件できる。だから特捜部はここを入り口に定めたのだ。

 先ほど、「針の穴に糸を通すような立件の仕方だ」と書いたのはそのためだ。ゴーン氏が会社を私物化したことはまず間違いないので「無理筋な事件だ」とは言わないが、少々危うい罪の問い方をしているのは間違いない。

 そうまでしてゴーン会長の刑事責任を追及しなければならなかった理由が日産、あるいは東京地検にはあるはずだ。

ルノー・日産・三菱連合は崩壊へ!?
 恐らく日産の経営陣の多くは、ルノーによる日産統合を画策している上、会社の私物化・専横が目に余るようになったゴーン氏を何とか排除したいと考えていた。しかし、取締役会で解任動議を提案するという「クーデター」を起こしても、仮に万一それが成功しても、何らかの逆襲を食らう恐れもあった。そこで、ウルトラCを狙って、捜査当局の協力を仰いでゴーン排除に動いたというのが今回の一件の本質ではないかと筆者は睨んでいる。言うなれば、特捜部を巻き込んだクーデター劇だ。

 もちろんゴーン氏側に何も問題がなければ検察が動くこともなかったろうが、「会社私物化」の明確な証拠がそこにあった。検察としても、日産側に協力する大義名分が立つという判断が下されたのだろう。

 今後の捜査についても触れておこう。入り口としては金融商品取引法違反から行くにしても、いずれは脱税、あるいは特別背任、横領というところでの立件を目指していくはずだ。

 これまでのセオリーを踏まえて予測するならば、金融商品取引法違反で捜査をし、次に特別背任あるいは横領について捜査し、そこで不正に得た報酬の金額が確定できれば、「それは報酬に当たるのだから本来は納税しなければならなかった。あなたは脱税しています」ということで、最後は脱税事件として立件することになるだろう。

 本来の目的ではない形で子会社が使われた、会社のお金が半ば私物化された、その状況を隠蔽しようとしてグレッグ・ケリーが日産社員に強い指示を与えていた、ということがこれまで報道されている。これらが事実認定されれば、恐らく裁判官の心証は真っ黒になる。ゴーン、ケリーの両氏が刑事罰を免れることは、現時点では極めて難しいと言わざるを得ない。

 残された最大の問題は、ルノーと日産の関係がどうなって行くか、だ。ルノー、日産、三菱自動車のような企業連合の場合、普通だったら持ち株会社を設立し、その下に3社がぶら下がるという形をとることが多い。持ち株会社が、傘下企業間のアライアンスや経営資源の適正配分、事業再編のハンドリングをするほうが効率的だからだ。

 ところがルノー・日産・三菱自動車の3社連合では、そういった組織的な司令塔がない。人的な司令塔としてゴーン氏が3社の会長を兼ねるという形で束ねていた。「ルノー・日産・三菱アライアンス」というパートナーシップもあるが、これとて代表はゴーン氏だ。つまり3社連合はゴーン氏が一人でまとめ上げていた連合体なのだ。

 その人物が逮捕され、経営の表舞台から消えてしまった。新たに3社の会長を兼務するような人物が出てくるだろうか。その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

 ルノーは日産の大株主であるから、「ルノーから新しい会長を派遣します」という申し出があるかもしれないが、経営規模ではルノーを上回る日産が、唯々諾々とルノーの要求に応えるとも思えない。3社連合は瓦解の方向に向かう可能性高いと思う。

 果たして日産の西川廣人社長はルノーとどう渡り合うのか。クーデター劇の第二幕はもう始まっている。

2018年11月19日月曜日

楽天はKDDI回線借りてスタートの「勝算」

 2019年10月に携帯電話事業者として新規参入する楽天は、KDDIと提携し、東名阪の都市部以外はKDDIからネットワークを借りてスタートする。果たして楽天の「勝算」は。
 ◇ギブアンドテイクの関係

 一方でKDDIは、楽天から決済サービスの「楽天ペイ」などの店舗網を使って、QRコード決済の「auペイ」を開始。楽天が培った物流基盤にも相乗りして、KDDIが展開している物販サービスの「ワウマ」の配送を強化する。

 新規携帯電話事業者として参入する楽天だが、もともと、サービス開始当初は、他社のネットワークを借りる予定だった。全国にネットワークを張り巡らせるには時間がかかるためで、過去にも、イー・アクセス(現ソフトバンク)が携帯電話事業者として新規参入した際には、都市部以外でNTTドコモのネットワークを借りていた。

 ただ、新規参入事業者への貸し出しは制度として義務化されておらず、各社ともビジネスとしてネットワークを提供している。この場合、ローミングされた分だけ、楽天からKDDIへの支払いが発生する。そのため、自前のネットワークが少ないと、ローミング料で利用者から得た収益が失われてしまう格好になる。

 楽天とKDDIの提携がおもしろいのは、逆に楽天側からも、KDDIに決済や物流の基盤を提供しているところにある。一方的にローミング料金を支払うわけではなくなり、KDDIからも対価を得られるため、ローミング料をある程度相殺できる。結果として、楽天にとっては、コストを抑えられるのがメリットだ。

 ◇LTEメインで相性がいい

 ネットワークの観点でも、楽天とKDDIは相性がいい。KDDIのスマホは、高速通信規格のLTEだけに対応している機種が多く、世代が一つ前の第3世代のネットワークに対応しなくても十分な通信エリアが構築されている。LTEだけでサービスを始める楽天にとって、利用しやすい環境だったというわけだ。

 一方でKDDIは、通信の上に乗せるサービスを強化していたところだ。ただ、QRコードを使った決済サービスはドコモやソフトバンクに出遅れており、物販サービスのワウマも、楽天やアマゾン、ヤフーといった競合とは渡り合える規模になっていない。

 これがソフトバンクだと、楽天側から決済基盤や物流網を借りるメリットが少ないため、楽天は一方的にローミング料を払う構図になる。サービス分野では楽天とヤフーが競合しているため、提携先としてはふさわしくなかったはずだ。格安スマホ事業者として参入していた楽天に回線を貸していたドコモとは手を組めそうだが、通信事業者で競合する会社との提携には難色を示していた。当面の全国ネットワークが必要な楽天と、決済、物販を強化したいKDDI双方の思惑が一致した結果といえるだろう。

 ◇料金は「まだ決まっていない」

 もっとも、楽天も東名阪は当初から自前のネットワークを整備しなければならない。特に都市部や建物が多く、地下鉄網も張り巡らされているため、こうしたエリアまで整備しようとすると、権利者との交渉に時間がかかる。

 楽天は「数百人体制で、基地局設置に向け、物件を保有している方に連絡を取り始めている」(山田善久副社長)というが、開始当初にどこまで電波がきっちり入るのかは不透明な部分が多い。

 また楽天は、ドコモなどからネットワークを借りる、格安スマホの楽天モバイルに近い料金を提供するとしているが、具体的な金額は「まだ決まっていない」(同)。既存大手3社には政府からの値下げ要請が強まるなか、ここに楽天がどう対抗していくのかは未知数といえる。

2018年11月13日火曜日

Firefox、Amazon.comなどでチェックした商品の値下げを知らせる「Price Wise」のテスト機能

 Mozillaは11月12日、Webブラウザ「Firefox」の未公開機能テストプログラム「Firefox Test Pilot」で、チェックした商品が値下げされると通知する「Price Wise」機能を公開した。

 対応するのは米国のAmazon、Best Buy、eBay、Home Depot、Walmartのオンラインショップだ。テストに参加するとツールバーにドルマークのアイコンが追加される。各オンラインショップで気になる商品のページを開いた状態でこのドルアイコンをクリックすると、そのページがリストに追加される。

Price Wiseのリストに商品を追加
 その商品の価格がページ上で変更されると、アイコンに[!]が表示され、アイコンを開くと幾ら値下げされたかが分かる。リスト上の商品をクリックすると商品ページが開くので、すぐに購入できる。

値下げ通知
 Mozillaはまた、Firefoxで開いているタブをメールで送る機能「Email Tabs」もTest Pilotに追加した。このテストに参加すると、ツールバーにPCとメールのアイコンが追加される。これをクリックすると開いているタブのリストが表示されるので、そこで送信したいタブを選び、コピーするあるいはメールするを選ぶ。現在対応するメーラーは米GoogleのGmailだけだが、将来的には他のメーラーにも対応していく計画だ(筆者がやってみたところ、「Email Tabs を有効化できませんでした。また後で試してください。」と表示されてしまった)。

2018年11月7日水曜日

ドコモの利益回復前倒しできるよう支援=料金値下げでNTT社長

NTT<9432.T>の澤田純社長は6日の会見で、NTTドコモ<9437.T>が携帯電話料金の値下げで来期減益を見込んでいることについて、持ち株会社として支援していく姿勢を示した。

澤田社長は「ドコモは2023年度には現状利益水準に戻すと言っているので、持ち株としては支援して(利益回復を)前倒しするようにしないといけない」と説明。「例えばグローバル調達会社にドコモが参画しやすいようにしたり、ドコモと他社でコストがかかっているプロセスをまとめることで効率化したり、色々な支援策を検討していく」と語った。

携帯電話料金の値下げをめぐっては、KDDI(au)<9433.T>とソフトバンクも検討しているが、増益基調は維持したい考えだ。

澤田社長は「減益しないで値下げをするという話は、あまり値下げしないということとほぼ同じだ」と語った。

2018年11月6日火曜日

巨大ITの規制、政府強化へ データ集中・市場独占懸念

 政府は米グーグルや米アマゾンなど、「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業への規制を強化する。個人情報や知的財産などのデータがこうした企業に集中して市場の寡占が進み、公正な競争環境をゆがめかねないためだ。欧州連合(EU)などの規制強化の動きと歩調を合わせる。

 7月から議論を進めてきた経済産業省や公正取引委員会などの検討会が5日、中間論点整理案を公表した。年内に最終案をとりまとめ、年明けから具体的な規制方法の検討に入る。

 検索やSNS、ネットショッピングなどのサービスを展開するIT企業は「プラットフォーマー」と呼ばれる。このうち、グーグルと米アップルに加え、米フェイスブックとアマゾンの4社はその頭文字を取って「GAFA(ガーファ)」とされる。こうした企業はこれまで、個人や事業者の取引を生む場を提供しているにすぎないとして、日本では規制の対象とみなされていなかったが、検索サービスやネット通販が普及するにつれ、個人の検索履歴や買い物履歴などのデータが集中し、市場の寡占も進んだ。

 一方で集めた情報をどう取り扱っているかが不透明なまま、ほかの企業が不利な取引を強いられるなど、不公正な条件にさらされているとの懸念も出てきた。

 そこで政府はプラットフォーマーに対し、企業との取引条件などの開示を義務づけることを検討。データを独占して市場をゆがめていないか、専門家を集めた監視組織の設置も議論の対象とする。

 プラットフォーマーが企業を買収する場合、公取委は買収相手の企業が持つ情報も加味し、個人情報や特許などのデータがどの程度、集積するかを審査対象に加えることも検討する。

 先行するEUは今年4月に専門の監視組織を発足させ、プラットフォーマーの規制案も公表している。

米国中間選挙…トランプ共和党が勝ったら「米中の未来」はこうなる

中間選挙後の対中政策
アメリカ時間の11月6日、中間選挙が行われ、ドナルド・トランプ大統領の約2年間の政権運営が問われることになる。それとともに、今後アメリカがアジアをどうしていくつもりなのか、特に中国との「新冷戦」を本格的に進めていくつもりなのかが、われわれアジアに生きる人々にとっては最も気になるところである。

そうしたことはもちろん、中間選挙でのトランプ共和党の勝敗次第で変わってくるだろう。

2年前の大番狂わせの大統領選と同様のトランプ勝利、すなわち上院も下院も共和党が制した場合、トランプ大統領の再選が見えてくる。そうなると、トランプ大統領は強権を手にすることになり、政策に余裕ができてくる。

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この場合、今月下旬にブエノスアイレスで開かれるG20(主要国・地域)首脳会議の際に行われる米中首脳会談で、中国側が大幅な譲歩案を提示し、いわばトランプ大統領に頭を下げる形で、貿易戦争を終結させようとするのではないか。トランプ政権が8年政権になると思えば、中国は強気に出られないからだ。

逆に、上院も下院もトランプ共和党が過半数を占められず敗北した場合、トランプ大統領はレイムダック化し、2年後の再選はおぼつかなくなる。そうなれば、中国の方がアメリカに強気に出やすい立場になる。中国としては、トランプ政権に対しては毅然と構えておき、次の政権に備えるということだ。

一番難しいのが、トランプ大統領が1勝1敗となる、すなわち上院は共和党が過半数を占め、下院は民主党が過半数を占めるケースである。その場合、トランプ大統領としては、2年後の再選を目指す芽はあるが、もう一波乱起こして成果を得ないといけない。そのため、中国に対しては、いま以上に強硬になっていく可能性が高い。

だが中国としても、2年後にトランプ大統領が再選するかどうか不明なわけだから、民主党にも片足を突っ込むことになり、トランプ政権に大きく妥協する必要はないと考える。そのため、今月末の米中首脳会談では、そこそこの譲歩案を示し、アメリカの中国攻撃が小休止するくらいの処置を取るのではないか。

いずれにしても、中間選挙後のトランプ政権の対中政策を見る時、当面の注目点は、ジェームズ・マティス国防長官の去就だと私は考えている。

トランプ政権内の意見対立
過去2年近くの波乱と混乱に満ちたトランプ政権にあって、「政権の良心」と言えたのが、マティス国防長官だった。トランプ政権が発足した翌月の昨年2月に来日し、安倍晋三首相や稲田朋美防衛相(当時)と会談したが、常に正論を吐くこの独身主義者の振る舞いは、日本に安心感を与えたものだ。

周知のように昨年は、アメリカと北朝鮮が一触即発となった一年だったが、米朝戦争やアメリカ軍による北朝鮮空爆という「有事」を回避できたのは、マティス長官の「存在感」が大きかった。マティス長官は一貫して、アメリカによる北朝鮮への武力行使は時期尚早であるとして、逸る大統領や周辺の強硬派に「待った」をかけ続けた。有事になれば、在韓米軍や在韓アメリカ人に多大な犠牲が出る可能性が高まるからだ。

「圧力はよいが戦争はよくない」――マティス国防長官の対北朝鮮政策は、最終的にはトランプ大統領の意見と一致した。

何事も利害得失で判断するトランプ大統領は、北朝鮮と戦争すれば必勝は間違いないが、アメリカ人の犠牲が多く出れば、中間選挙に敗れ、再選も不可能になることを悟ったのだ。

そもそも米朝は国交さえないので、北朝鮮にいくら制裁をかけても、アメリカ経済とは関係ない。要はトランプ流に言えば、北朝鮮との争いは「利益を生むビジネス」ではなかったのだ。

そういうわけでトランプ政権は、今年に入って「仮想敵国」を、北朝鮮から中国に移し替えた。

この方針転換は、マティス国防長官、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長らの軍閥、マイク・ペンス副大統領、ジョン・ボルトン大統領安保担当補佐官らの外交強硬派、ロバート・ライトハイザーUSTR(米通商代表部)やウィルバー・ロス商務長官らの通商強硬派、そしてキルステン・ニールセン国土安全保障長官やクリストファー・レイFBI長官ら国内安保強硬派たちに、一致して受け入れられた。

軍閥は中国軍の拡大路線に憂慮し、外交強硬派は中国の覇権取りを警戒し、通商強硬派は中国経済の急速な発展を畏れ、国内安保派は中国の技術覇権を阻止しようとしていたからだ。さらに言えば、かつてヒラリー・クリントン候補を支持した民主党エスタブリッシュメントのグループも、中国の覇権取りを押さえ込みたいという点で、中国には強硬だ。

こうした「風」を受けて、トランプ大統領は今年3月22日、中国との貿易戦争の「宣戦布告」を行った。それに対して、中国も強く受けて立った。

それから半年以上を経て中間選挙を迎えた現在、これらトランプ政権内の一群の対中強硬派たちは、一枚岩とは言えなくなってきている。簡述すれば、さらに中国を叩いて貶めるべきだと考える過激なグループと、これ以上、中国との対立が激化すると、アメリカも思わぬしっぺ返しを喰らう恐れがあると警告する穏健なグループとに分かれ、意見対立が起こっているのだ。

その後者の代表格が、マティス国防長官というわけである。

米中両軍が激突するとしたら
9月5日付『ワシントン・ポスト』は、「ホワイトハウスはジム・マティスの潜在的な交替を検討中」という記事を報じた。ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が出版するトランプ大統領の暴露本の中で、マティス国防長官がトランプ大統領のことを、「理解力は小学5年生か6年生並み」と評したとする責任を取らされるという内容だ。

9月15日には『ニューヨークタイムズ』も、同様の辞任観測記事を流した。

これに対し、マティス長官は9月18日、国防総省で、「それらの報道を真剣に受け止める気はない。就任以来、いくたびもそういう噂が立ち、消えては次の噂が報じられた」と述べ、辞任報道を打ち消した。

だが、10月14日に放送されたCBSの報道番組『60分』で、インタビューを受けたトランプ大統領自身が、マティス国防長官の辞任説を問われて、こう答えたのだ。

「彼が辞任する可能性はある。もしも真実が知りたいというなら言うが、彼は民主党員のようだと私は思っている」

この発言は、中間選挙まで1ヵ月を切って、大統領自らが、国防長官を公の場で侮辱したに等しかった。この時、トランプ大統領は、「2日前にマティス長官とランチを共にした」とも語っている。

これは推測だが、マティス長官は、9月30日の南シナ海での米中艦艇の一触即発事件を受けて、「これ以上、中国に強硬に出ては危険だ」と、大統領に「直談判」に及んだのではなかったか。もしくはトランプ大統領に呼びつけられ、「あの時、なぜわが方が引いたのだ?」と問われて、そのような発言をして大統領と口論になったのかもしれない。

先月のこのコラムで詳述したように、10月1日、アメリカ軍は、「前日の9月30日に、南シナ海で駆逐艦『ディケーター』が『航行の自由作戦』を実施中、中国人民解放軍のミサイル駆逐艦(『蘭州』)が、海域から離れるよう警告し、41mの距離まで異常接近してきた」と発表した。これに対し10月2日、中国国防部も強く反論した。

「アメリカ軍の蛮行は航行の自由の名のもとに、法を飛び越えて沿岸国の主権と安全を脅かし、地域の平和と安定を損なうものであり、中国は決然と反対する。中国の軍隊は、防衛の職責を堅実に履行し、今後とも一切の必要な措置を取り、国家の主権と安全を決然と死守し、地域の平和と安定を決然と維持・保護していく」

近未来に米中両軍が激突するとしたら、それは南シナ海、台湾海域、尖閣諸島海域の3ヵ所のうちいずれかしか考えにくい。そのうち南シナ海が、最も危険な水域となってきたことを世界に知らしめた「事件」だった。


「米中共存」か、「米中新冷戦」か
もしも中間選挙の後にマティス国防長官が辞任した場合、おそらく「マティス派」のケリー大統領首席補佐官、ダンフォード統合参謀本部議長の二人も連座して辞めることになるだろう。そうなると、トランプ政権の対中強硬策に歯止めが利かなくなる。

トランプ政権がいま以上に強硬策に出るようになると、習近平政権も同様に、いま以上に強硬策に出ざるを得なくなる。なぜなら、前の江沢民政権(鄧小平時代も含む)は「韜光養晦」(目立たぬよう実力を蓄える)を標榜し、胡錦濤政権は「求同存異」(同じものを求めながらも異なるものが存在する)をスローガンに掲げていた。

ところが、いまの習近平政権のスローガンは、「中華民族の偉大なる復興」「強国、強軍の夢」である。普段は勇ましく拳を振り上げている習近平政権がアメリカに弱気に出たなら、8954万中国共産党の内部で求心力を失い、同時に13億9000万国民の失望を買うだろう。

そして最も不信感を露わにするのは、200万人民解放軍ではないか。

習近平が軍を統括する党中央軍事委員会主席に就任して丸6年が経つが、その間、習近平主席は、徹底して軍内の利権やビジネスなどを排除し、大胆な機構改編を断行した。そうした大ナタを振るい、「軍人には戦争中と戦争準備中の二つの状態しかない!」と発破をかけることによって、自己に軍権を集中させてきた。そんな習主席が、アメリカに対して弱腰だということになれば、軍内部での求心力は急速に薄れていくに違いないからだ。

つまり、中間選挙を経たトランプ政権が、対中強硬策のレベルを引き上げた場合、習近平政権もまた、対米強硬策のレベルを引き上げざるを得ないということだ。

具体的には例えば、2012年に尖閣諸島を国有化した日本に対して行い、2016年にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備を決めた韓国に対して行ったような、中国国内におけるアメリカ企業の締め出しである。GM、ボーイング、アップル(iPhone)、スターバックス、マクドナルド、ディズニー……。中国国内で儲けているアメリカ企業は多数あるが、それらを締め出していく。

そうなると、これは確かに「米中新冷戦」である。最後に、中国がアメリカ国債を売り払うところまで行ったなら、もはや世界は、軍事的にも経済的にも大混乱であり、まさに「悪夢のシナリオ」である。

それでは中間選挙後に、「米中共存」となるのか、それともやはり、「米中新冷戦」となるのか。

私は、それは結局のところ、トランプ政権次第だと思う。なぜなら習近平政権には選択の余地が少ないが、トランプ政権は比較的フリーハンドだからだ。

習近平政権は国内の民主化を進める気はなく、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義」を強化するだろう。そして対外的には、「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)や「新型の大国関係」(米中による太平洋二分割)を推し進めようとする。

「一帯一路」の公式ホームページでは、すでに関係国を121ヵ国まで増やしている。日本とアメリカは含まれていないが、韓国は入っているし、アメリカ大陸の国々にまで広げている。

さらに、アジアの周辺諸国や発展途上国に、「中国模式」(チャイニーズ・スタンダード)を拡散させようとするだろう。中国のように、政治は社会主義の一党独裁、経済は市場経済という方式であっても、十分に経済発展していけるということを示して、「仲間」を増やそうという戦略だ。まるで20世紀のソ連のようだが、ソ連と違って「経済の成功例」を引っさげているだけに、説得力がある。

つまり、習近平政権は今後とも、アメリカがトランプ政権だろうが、他の政権に代わろうが、「中国模式」を進めていくのである。だからそれを受容するか、拒絶して対抗するかは、ひとえにアメリカ側の選択ということになる。


日本へのラブコール
もちろん習近平政権としても、ただやみくもに「中国模式」を貫いていくわけではない。最近の特徴としては、周辺諸国への「微笑外交」を強めていることだ。特に、アメリカの東アジア地域における最大の同盟国であり、世界第3の経済大国である日本を取り込もうという姿勢が顕著である。

安倍首相の訪中については先週のこのコラムで述べたが、中国の有力経済紙『第一財経日報』(11月4日付)は、「魏建国:中日"第三方市场協力"は"一带一路"に限らない」という長文の記事を載せた。

元商務部副部長の魏建国・中国国際経済交流センター副理事長は、今回の安倍首相の訪中時の「裏方の仕掛け人」と言われるキーパーソンだ。魏副理事長の主張の要旨は、次の通りである。

「今回の中日第三方市場協力の意義は重大だ。それは日本が、『一帯一路』というカギとなる問題で、アメリカと袂を分かっただけでなく、将来の中国と他国との協力の一つの規範となるものだ。

中日はこれから、文化・環境・都市計画・養老・健康・医薬などの分野で、さらに『第三方市場』での協力を行うことになるだろう。今回の安倍首相の訪中は、中日の今後40年の貿易関係が、競争から協調になり、互いの長所を補い合い、互いの利益と共勝に変わることを意味する。加えて、中日が手を携えて自由貿易を推進し、一国主義や保護貿易主義に反対していくことを示した。今後は、日本がAIIB(アジアインフラ投資銀行)に加入することもあり得るだろう。

習近平主席が『新シルクロード経済ベルト』と『21世紀海上シルクロード』の建設協力を提起して以降、日本最古参の軍需工業企業であるIHIの社長が、真っ先に私のところへ来て、日本も参加できないだろうかと聞いてきた。その後、私が推進した一連の活動の中で、日本の企業経営者たちが積極的に発言したのは、『走出去』(中国企業の対外進出)に対する強烈な協力願望だった。

現在、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産などは、中国企業といかに『一帯一路』の関係国家地域でインフラ建設や農業、加工製造業、新エネルギーなど多分野で協力できるかという研究を強化している。

それは、中国とその他の国が、第三国の市場を共同開拓することの先例ともなる。例えば、中国とフランスが、イギリスのヒンクリー原発を共同開発するプロジェクトや、中国とアメリカがギニアでアルミニウムとバナジウムの資源開発を行うといったプロジェクトなどだ。

これらの協力は個々のプロジェクトに過ぎないが、今後行っていく『第三方』は、『一帯一路』の関係国ばかりでなく、さらに広範な市場と地域を含んでいる。10月26日に、中日双方がサインして以降、すでにフランス、ドイツなどの国の関係者が私のところへやって来て、詳細な研究を行っている。彼らは日本が先鞭をつけたと見ているのだ。

これらのプロジェクトは、『企業主体、市場操作、政府引率、互信互利』の原則を尊重しなければいけない。そしてすべての具体的状況を公開し、一部の国際学者たちの『一帯一路』のプロジェクトの透明度、資金源、投資の回収などへの関心に応えたものになっている。

今回の中日の第三方市場での協力の覚書は、今後の事業のためのプラットフォームであり、中国国際貿易促進委員会とJETROが企業を牽引して行ったプロジェクトである。その他、中日は共にエネルギーの需要が大きい国であり、石油や石化産品の輸入時に、人民元決済ができるようにする。中日が将来、国際的な銀行団を組み、第三方市場を共同開発した場合、さらに信用と利便性が増すだろう。

中日は手を携えて、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)を年内に妥結させるだけでなく、中日韓自由貿易協定(3ヵ国で世界貿易の4割を占める)も推進していく。もしも日本が、TPP11という枠組みを超えてもよいというなら、中国はおそらく完全にそれに乗っていけるだろう。世界第2と第3の経済大国が手を携えれば、この地域の協定の範囲と質が広がり、さらにレベルアップした自由貿易協定となるだろう」

これまでは考えられもしなかった日本へのラブコールである。ちなみにこの記事には、下記の補足説明もついていた。

・今年1月~8月の日中貿易額は2141億ドルに達し、前年同期比11.2%アップで、過去7年の下降線を変えるものである。
・1月~8月の日本企業の中国での新規進出は529社に上り、前年比40%以上アップ。投資額も28.2億ドルで、前年同期比38.3%アップした。
・中国国際輸入博覧会(上海で11月5日~10日に開催)で、579社の日本企業が参加し、世界最多。日本企業のブースの総面積は1万8888㎡に達する。

この説明の最後にあるように、中国はアメリカの中間選挙にぶつけて、中国国際輸入博覧会を開催した。初日の5日午前中には、北京から駆けつけた習近平主席が、基調演説を行った。

「中国は主導的に輸入を拡大していく。単なる計画ではなく、世界に向かって、未来に向かって共同で発展していくことを遠謀深慮し、促進するのだ。中国は将来にわたって、国内消費を順調に伸ばしていくものと見られ、またそれに向けて有効な政策措置を積極的に取っていく。国民の収入が増加し、消費能力が高まり、中間層や富裕層の消費を伸ばしていく。国内市場の潜在力を引き続き開放し、輸入の余地を拡大していく。

中国は将来的にさらに関税を下げ、通関の利便化のレベルを上げ、輸入にかかるコストを削減し、国際ECなどの新業態、新モデルの発展を加速させていく。中国には13億人以上の大市場があり、中国は真剣に各国に市場を開放していく。中国国際輸入博覧会は毎年開催するばかりか、そのレベルと効果を年々引き上げていく」

まさに、中間選挙に必死になっている太平洋の向こうのトランプ大統領を意識したメッセージだった。米中貿易戦争が中国側に不利なのは事実だが、中国もただでは転ばないというわけだ。

徴用工、日本単独で国際司法裁提訴へ 韓国の不当性周知 駐韓大使は召還せず

 政府は5日、韓国の元徴用工をめぐる訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる確定判決を出した問題で、韓国政府が賠償金の肩代わりを行う立法措置などを取らない限り、国際司法裁判所(ICJ)に提訴する方針を固めた。また、裁判手続きに関する韓国側との交渉、折衝などが必要なため、長嶺安政駐韓大使の召還は行わない。

 ICJで裁判を開くには原則として紛争当事国の同意が必要で、手続きには(1)相手国の同意を経て共同付託する(2)単独で提訴した上で相手国の同意を得る−という2つの方法がある。政府は韓国から事前に同意を得るのは難しいことから単独提訴に踏み切る。

 その場合も韓国の同意は得られないとみられ、裁判自体は成立しない可能性が高い。だが、韓国に同意しない理由を説明する義務が発生するため、政府は「韓国の異常性を世界に知らしめることができる」と判断した。

 河野太郎外相は既に、徴用工問題が1965(昭和40)年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」としていることや、判決が国際法に照らしていかに不当かを英文にまとめ、在外公館を通じて各国政府やマスコミに周知させるよう指示している。

 政府は今回の判決だけでなく、2015(平成27)年の慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意に対する韓国側の不履行など、度重なる韓国の不誠実な対応についてもアピールする機会とする考えだ。

 政府は今回の判決は日韓基本条約の基盤を崩壊させかねない問題だと重視しており、政府高官は「今回は徹底的にやる」と語る。韓国側が現在、「韓国政府内でいろいろと判決への対応を検討している」と釈明しているため当面は対応を見守るが、外務省幹部は「おそらく韓国は有効な措置は取れないだろう」とみている。

 この問題をめぐり、安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で、「国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れて毅然(きぜん)として対応していく」と述べていた。

2018年11月5日月曜日

カーシェア進む多様化 定額制や個人間でポルシェ貸し借り 自動運転時代にらむ

 自動車の「マイカー」文化に変化の兆しが出ている。カーシェアリングなど「利用」に主眼を置いたサービスが人気となる中、トヨタ自動車は月額定額制で複数の車種に乗れる「KINTO(キント)」を発表。個人間カーシェアなど、サービスの多様化が進む。将来は自動運転技術を活用した移動サービスの巨大市場が生まれる可能性が高く、各社の取り組みはその"布石"でもある。

 来年初めの開始を予定するキントは車両、税金、保険、メンテナンスなどの料金を一体化。車を購入・所有する煩雑さをなくして利用を促す。価格や取り扱い車種は未定。孫悟空が乗る筋斗雲(きんとうん)が名称の由来で、「必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる」(豊田章男社長)サービスを目指す。

 また、カーシェアを年内に東京都内で試験的に始め、来年中に本格的に立ち上げる。全国の販売店が抱える数万台の試乗車の多くは週末以外使われておらず、有効活用する狙い。長田准(じゅん)常務役員は「車が好きな方に気軽に乗っていただきトヨタファンを増やしたい」と強調する。

 日産自動車もカーシェアを展開するが、トヨタとは異なる戦略を選んだ。電気自動車(EV)と、独自のハイブリッド技術「eパワー」搭載車に限定したサービス「eシェアモビ」を今年1月から実施。得意とする電動車の良さを知ってもらうのが狙いだ。登録会員は現在約4500人と、半年前からほぼ倍増。星野朝子専務執行役員は「電気による走りのよさや操作の楽しさが高く評価されており、日産ブランドを押し上げている」と話す。^

 多くのカーシェアでは企業が提供した車を使うが、ディー・エヌ・エー(DeNA)が展開する「Anyca(エニカ)」はユニークだ。車を貸したい人と借りたい人のニーズをインターネットで結びつける。9月末現在で約700車種6000台の車が登録されており、人気上位はBMWやポルシェなどの高級輸入車。トラブルの不安がつきまとうが、借りた人は1日単位で保険に加入するシステムで、車の傷を確認し、修理を支援するなどの機能も充実させた。事業責任者の馬場光氏は、「最先端の人は所有から利用に動き始めている」と指摘する。

 各社がサービス実施でノウハウの蓄積やデータ収集を進めるのは、自動運転時代の到来に備える意味もある。トヨタはソフトバンクと提携し、開発中の自動運転EV「イーパレット」を移動サービスの基盤として新市場の主導権を握る構えだ。トヨタは、「地元をよく知る販売店にサービス展開を考えてもらう」(長田氏)と、全国約5000店の販売店の知見を活用する方針だ。

Q&A ドコモ値下げ「分離プラン」とは?

 NTTドコモが来春、通信料金を2〜4割値下げすると表明した。携帯電話料金をめぐる疑問をQ&Aにまとめた。

 Q ドコモが値下げの軸にする「分離プラン」って何

 A 携帯電話端末の購入代金と毎月の通信料金を区別した料金プラン。消費者は、インターネットを利用するためのデータ容量や定額通話などのサービスの利用料が、自分の生活に合っているか分かりやすくなる。その結果、消費者に選ばれようと、価格競争の活性化やサービスの向上が見込めるとされている。

 Q なぜ、今の料金は分かりにくいの

 A 米アップルのiPhone(アイフォーン)など高額な端末販売を優先するため、一定期間契約を結ぶことを前提に、高額な購入代金を割り引く端末と通信のセット販売が主力だからだ。端末によって割引額が異なるほか、家族で複数台購入するとさらに割引が適用されるなど、条件もさまざまでますます複雑になっている

 Q 月々の支払いが割り引かれるのであれば、従来プランでもいいのでは

 A 端末割引の原資を携帯電話大手は通信料金でまかなっている。そのため、端末を買い替えない長期利用者は、通信料金が高止まりし、恩恵を受けていない。端末割引を受けたいのであれば、定期的に機種変更しなければならない。

 Q 分離プランを既に導入している会社もある

 A 大手3社とも導入しているが、選べる端末が限定的だったり、他社への乗り換えや他の料金プランへの変更が難しかったりと、使い勝手はよくない。

 Q 結局、料金は安くなるの

 A 通信料金が下がる分、端末の購入代金は上がる。端末割引は現在、2年縛りや4年縛りといわれる期間拘束契約が前提だが、政府から見直しを求められている。今後、端末割引をどう携帯各社が手当てするかが重要で、支払総額がどうなるかは各社の具体的な料金プラン次第だ。端末価格は上昇しており、家計の負担が重くなる可能性もある。ただ、端末の機能向上が頭打ちで買い替えサイクルが長くなっていることや、政府も中古端末の流通を促しており、端末割引が減ることの影響は限定的になる可能性もある。自分に合った料金プランを選択することが重要だ。

2018年11月2日金曜日

クレジットカードにもIoT化の波、SIM+ディスプレイ内蔵の超高性能クレカ「Wallet Card」

 現金以外の決済手段として、身近な存在であるクレジットカード。日本全体での利用額も増えつつあるが、最近ではこのクレジットカードに"IoT化"の波がやってきている。

 2018年10月、ソフトバンクが米Dynamicsと次世代型クレジットカードの日本展開について協業を検討していると発表した。Dynamicsが開発しているカードには、三井住友カードが採用を発表したパスコード機能付きのクレジットカードなどがあるが、今回の協業で主役になるのは、SIMカードを内蔵し、双方向通信が可能な「Wallet Card」だ。

 通信機能を搭載したことで、さまざまなデータをクレジットカード内に保存できる。1枚のカードにデビットカードやキャッシュカードなど、さまざまな機能を持たせられる他、データをダウンロードするだけで、すぐにカードが使えるようになるという。

 「カードを紛失してしまった場合、これまではカード会社に電話などで連絡し、利用停止の手続きを行うのが一般的でしたが、Wallet Cardならば、連絡を受けてすぐに遠隔操作でカード内に入っている情報を消去できます」(ソフトバンク コマース&サービス コンシューマー事業本部 IoT事業推進本部 事業開発室 鈴木礼子さん)

 カードの右下部分には、E Ink(電子ペーパー)ディスプレイを内蔵しており、ディスプレイ上部にあるボタンで、表示を切り替えられる。Dynamicsによると、100種類以上の画面を切り替えられるということで、カード情報以外にも、QRコードやクーポンといったデータを表示させる利用方法も模索しているそうだ。

 実際にサンプルのカードを触ってみたが、ボタンを押してからディスプレイの表示が切り替わるまでには5秒から10秒ほどかかった。これを早いとみるか遅いとみるかは、個人の感覚によるかもしれないが、5種類も入れれば端から端まで移動するのに1分ほどかかる計算だ。メインに使う機能を2〜3種類ほど決めておき、それ以外はサブとして使うくらいがちょうどいいかもしれない。

 ディスプレイを表示させるために、バッテリーを内蔵しているが、それによってカードの重さが大きく変わるということはない。「消費電力が低いため、クレジットカードの有効期限(3〜5年)までは持つことを想定している」(鈴木さん)とのことだが、万が一の際には、決済の瞬間に充電する仕組みも備えているようだ。

超高性能クレカ、いつごろ日本で出回る?
 今回の協業では、ソフトバンクがSIMカードを中心とした通信とネットワークのサポートを、ソフトバンク コマース&サービス(C&S)が企画やマーケティング、販売を担当する予定だ。2018年1月に米国ラスベガス行われたCES(Consumer Electronics Show)で、ソフトバンクの担当者がDynamicsのブースを訪れたことが、協業検討のきっかけだったという。

 Wallet Cardの採用事例はまだほとんどなく、世界中で見てもドバイのEmirates NBD銀行が2019年に導入を予定しているくらい。これからソフトバンク C&Sが国内企業に営業をかけていくとのことだが、鈴木さんによれば、既に興味を示している金融機関は複数出てきているそうだ。

 「Fintechのトレンドもありますし、危機感を抱いている金融機関は少なくありません。特に銀行の場合、キャッシュカードとクレジットカード、デビットカードと複数のカードを1つにまとめられるメリットは大きいと思います。その他にも複数のポイントカードを1つにまとめられるような動きも出てくると面白いですね」(鈴木さん)

 実際、このWallet Cardはいつごろ日本で出回るのだろうか。鈴木さんは「2019年中には日本国内で展開したい」と意気込むが、クライアントごとのカスタマイズもあるため、案件化してから、開発に半年ほどかかる見込みだという。早いタイミングで話がまとまれば、2019年中にお披露目……という可能性もあるかもしれない。

日本車両株がストップ安 事業に不安、投げ売り

 2日午前の東京株式市場で、日本車両製造(名古屋市)の株価が急落し、一時は値幅制限いっぱいのストップ安価格2463円まで下げた。前日終値比500円安い。

 18人が死亡した台湾の特急列車脱線事故に関し、同社は1日、配線の一部が未接続のまま車両を出荷していたことを明らかにした。事故との因果関係を否定したが、市場では「今後の列車製造事業に不安を感じた投資家が同社株を投げ売りした」(大手証券)という。

 東京証券取引所では各銘柄に1営業日当たりの値幅を価格帯に応じて設定。日本車両製造株は前日終値比で上下に500円の幅が設定されていた。