2018年11月2日金曜日

クレジットカードにもIoT化の波、SIM+ディスプレイ内蔵の超高性能クレカ「Wallet Card」

 現金以外の決済手段として、身近な存在であるクレジットカード。日本全体での利用額も増えつつあるが、最近ではこのクレジットカードに"IoT化"の波がやってきている。

 2018年10月、ソフトバンクが米Dynamicsと次世代型クレジットカードの日本展開について協業を検討していると発表した。Dynamicsが開発しているカードには、三井住友カードが採用を発表したパスコード機能付きのクレジットカードなどがあるが、今回の協業で主役になるのは、SIMカードを内蔵し、双方向通信が可能な「Wallet Card」だ。

 通信機能を搭載したことで、さまざまなデータをクレジットカード内に保存できる。1枚のカードにデビットカードやキャッシュカードなど、さまざまな機能を持たせられる他、データをダウンロードするだけで、すぐにカードが使えるようになるという。

 「カードを紛失してしまった場合、これまではカード会社に電話などで連絡し、利用停止の手続きを行うのが一般的でしたが、Wallet Cardならば、連絡を受けてすぐに遠隔操作でカード内に入っている情報を消去できます」(ソフトバンク コマース&サービス コンシューマー事業本部 IoT事業推進本部 事業開発室 鈴木礼子さん)

 カードの右下部分には、E Ink(電子ペーパー)ディスプレイを内蔵しており、ディスプレイ上部にあるボタンで、表示を切り替えられる。Dynamicsによると、100種類以上の画面を切り替えられるということで、カード情報以外にも、QRコードやクーポンといったデータを表示させる利用方法も模索しているそうだ。

 実際にサンプルのカードを触ってみたが、ボタンを押してからディスプレイの表示が切り替わるまでには5秒から10秒ほどかかった。これを早いとみるか遅いとみるかは、個人の感覚によるかもしれないが、5種類も入れれば端から端まで移動するのに1分ほどかかる計算だ。メインに使う機能を2〜3種類ほど決めておき、それ以外はサブとして使うくらいがちょうどいいかもしれない。

 ディスプレイを表示させるために、バッテリーを内蔵しているが、それによってカードの重さが大きく変わるということはない。「消費電力が低いため、クレジットカードの有効期限(3〜5年)までは持つことを想定している」(鈴木さん)とのことだが、万が一の際には、決済の瞬間に充電する仕組みも備えているようだ。

超高性能クレカ、いつごろ日本で出回る?
 今回の協業では、ソフトバンクがSIMカードを中心とした通信とネットワークのサポートを、ソフトバンク コマース&サービス(C&S)が企画やマーケティング、販売を担当する予定だ。2018年1月に米国ラスベガス行われたCES(Consumer Electronics Show)で、ソフトバンクの担当者がDynamicsのブースを訪れたことが、協業検討のきっかけだったという。

 Wallet Cardの採用事例はまだほとんどなく、世界中で見てもドバイのEmirates NBD銀行が2019年に導入を予定しているくらい。これからソフトバンク C&Sが国内企業に営業をかけていくとのことだが、鈴木さんによれば、既に興味を示している金融機関は複数出てきているそうだ。

 「Fintechのトレンドもありますし、危機感を抱いている金融機関は少なくありません。特に銀行の場合、キャッシュカードとクレジットカード、デビットカードと複数のカードを1つにまとめられるメリットは大きいと思います。その他にも複数のポイントカードを1つにまとめられるような動きも出てくると面白いですね」(鈴木さん)

 実際、このWallet Cardはいつごろ日本で出回るのだろうか。鈴木さんは「2019年中には日本国内で展開したい」と意気込むが、クライアントごとのカスタマイズもあるため、案件化してから、開発に半年ほどかかる見込みだという。早いタイミングで話がまとまれば、2019年中にお披露目……という可能性もあるかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿